「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第8回)」
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そこで,医師を増そうという意見も当然あります.
他方,医師需要の正確な見通しがないところで医師を増やせば,今度は過剰になるのではないか,という意見もあります.
医師の養成には時間がかかりますので,短期的には,教員となった医師の分だけ,地域医療で医師が不足することを懸念する声もあります.
また,医師を増やすにしても,医学部定員の増加によるのか,医学部新設によるのか,意見が対立しています.
「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第8回)」が,平成23年8月10日,開かれました.議論は大詰めとなってきています.
◆ 論点整理
「資料7 事務局提出資料(論点整理(素案))」によると,
1.医師の配置やキャリアパス等
2.医師の勤務・診療に関する環境整備
3.地域枠の活用等による地域医療の充実
4.基礎研究、イノベーションを担う医師(研究医)養成の充実
5.国際貢献等グローバルな視点で活躍する医師養成の充実
は,意見がまとまった論点です.
特にさらなる議論が必要と思われる項目は,次の6~8です.
6.総合医の養成の必要性
[1]総合医の必要性
[2]総合医の養成のための教育
7.医学教育の改革
[1]カリキュラムの改革の必要性
[2]各大学の特色ある教育
[3]一般教養のあり方
[4]診療参加型臨床実習の充実(基本的な診療能力の確実な修得)
[5]地域病院等と連携した教育の充実
[6]大学入学から卒後までを見通した教育の充実
8.今後の医師養成体制の充実
[1]大学における指導体制の充実の必要性
[2]指導体制の充実の方法
引き続き議論が必要とされるのは,次の3点とされています.
1.医師数の推計
2.今後の入学定員増
3.新設による対応
◆ 必要とされる医師数の推定
素案は「「現時点では、医師の需要が供給を上回っていること」や「将来的には、医師の供給が需要を上回る時期が来ること」については見解が概ね一致している。」とまとめています.
検討会でだされた意見は,次のとおりまとめられています.
○医師需要の将来予測を行うことは困難であり、米国を除いてどこの国もやっていない。
○人口は今後減少するが、病気が多くなる65歳以上の人口は今後増加してくることを考慮に入れるべき。
○将来的には若い人が減って高齢者が増え、ケアの内容が大きく変わってくる。また、要介護者が増えていく。
○医療が高度化して複雑になればなるほど、より多くの医者が必要となる。
○日本人の8割が病院で亡くなる時代となっており、かつては開業医が担当していた「看取り」は、病院の勤務医が行うようになってきている。
○需要は予測できないことを前提に、定期的に医師の定数を見直していくという仕組みを作るべき。
◆ 入学定員増で対応した場合の得失
素案は「昨今の医師不足に対する社会的ニーズを踏まえ、平成20年度から定員増が図られてきた。具体的には、平成23年度の定員は、20年度から計1,298人増の8,923人となっている。」と指摘しています.
検討会でだされた意見は,次のとおりまとめられています.
○既存の医学部の体制を強化しながら、医学部定員増で対応をしていくべき。
○2022年以降は、医師が余ってくると推計されている。この余った医師をどうするのか、我々は将来にも責任を持たなければならない。
○現在の不足数をどうするかということと未来をどうするかということは分けて考える必要がある。
○東日本大震災による医師喪失・不足に対応する目的で、10年間の時限つきで被災地にある医学部の入学定員増を提案したい。
○医師数を増やすべきでないとするならば、偏在対策についての議論が必要であり、増やすべきとするならば、都市部への集中傾向や医療費の問題を議論すべきである。一点だけを議論するのではなく、システムとして考えるべき。
定員増などに要する経費についての意見は,次のとおりまとめられています.
○地域のニーズを議論した上で、国民の税金としてどこまで払うのか、地域のお金でどこまでやるのかという議論をしていくことが必要。
○米国並みの医療サービスを日本で提供するならばもっとずっと医療費がかかるだろうが、医療費にそこまで支出することは難しいのではないか。
○日本の対GDP比医療費(8.1%)はOECD平均(9.0%)に比べて低いとの指摘があるが、医師養成にかける費用も少ない。高等教育費を回復する機会があるならば、総合医の養成に力を入れる大学に手厚くすることが考えられないか。
◆ 医学部新設で対応した場合の得失
検討会でだされた意見は,次のとおりまとめられています.
○既存の医学部の入学定員を増やしているが、教員も増えておらず、周りの施設もないという状況。この対応を現場に強いるのは限界があり、医学部を新設すべき。
○医学部が東西に偏在しているため、医学部を東日本に新設すべき。
○しっかりした医学教育ができるシステムを作るために医学部新設を検討するのもよいかと思うが、医師数を増加させるためだけに医学部を作るのは賛成しかねる。
○医学部を新設してから医師が働くまで時間がかかることを考えると、教員などを増強しながら、今の医学部の定員増で対応して医師を育てていくべき。
○将来的に医師数が過剰になった場合を考えると、既存の医学部定員数の調整で対応していくべき。医学部新設は到底考えられない。
◆ 検討会の議論
医学部新設は,医学部の地域偏在の解消につながり,また総合医などの新しい医療ニーズに特化した医師養成が可能になる,と言われますが,他方,将来医師供給が超過した場合に規模を縮小することが事実上難しいという意見もあります.
問題は医師不足ではなく,医師偏在である,という意見も主張されています.
「安西座長は、「(検討会として)具体案を出さないと、世間の期待には応えられない」と指摘。その上で、「医師の数自体は充足している(から偏在解消で対応すべき)とおっしゃるのであれば、偏在をどう解消するのか具体案を出さなければいけない」「医師を増やさないといけないとおっしゃる方は、増え過ぎてしまうのではないかという疑問に答える必要がある」などと述べ、具体的な対応策を示すべきだとの考えを示した。文科省はこの日の意見を踏まえて素案を修正し、次回会合で改めて示す方針だ。」とのことです.
キャリアブレイン「医学部定員検討会で論点整理案- 文科省、定員増は「引き続き議論」」ご参照
谷直樹
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