脳死状態と死亡(人の法律上の死)

医学は人の組織の機能停止を判定できますが,「人の法律上の死」は単に医学が決めるべきことではないと思います.
「臓器の移植に関する法律」は平成22年に改正されましたが,「臓器の移植に関する法律」に基づく臓器提供の場合に限って「脳死」が「法律上の死」とみなされる,と解釈します.
また,これが,現在でも多数の考え方であり実務である,と思います.

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◆ 法解釈
一家綱邦氏と池谷博氏は,次のとおり述べます.
「改正法が施行されれば,脳死を人の死とするのは臓器移植の場合に限らないのか,いわゆる脳死一元説を採用するのかが争点になる.
この点について,国会・委員会の会議録(特に改正法になった案の提出者の主張)からは判然とせず,論者の見解も一致を見ないが,改正条項は臓器移植の場合に限った規定であり,脳死は一律に人の死であることまでは示していないと解するのが妥当であろう.それは,条項の「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った」という判定は, 改正条項の柱書により,「次の各号のいずれかに該当する場合に限り,行うことができる」として,臓器移植の場合に限られること,改正後も条項が「死体」ではなく「脳死した者の身体」,「遺族」ではなく「家族」という用語を用い,脳死一元説に反対する立場への配慮が窺えることが理由として挙げられる.」
「脳死・臓器移植法の改正を巡る医事法・法医学的考察」(京都府立医科大学大学院医学研究科法医学教室・一家綱邦,池谷博)
きわめて適切な解釈と思います.
◆ ガイドライン
「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する 指針(ガイドライン)」(平成22年7月17日一部改正)は,次のとおり定めています.
「第7 脳死下での臓器移植にかかわらない一般の脳死判定に関する事項
法は、臓器移植の適正な実施に関して必要な事項を定めているものであり、脳死下での臓器移植にかかわらない一般の脳死判定について定めているものではないこと。このため、治療方針の決定等のために行われる一般の脳死判定については、従来どおりの取扱いで差し支えないこと。」
法が,何をもって人の死とするかは,その法の目的・趣旨により異なりますので,妥当な指針(ガイドライン)だと思います.「臓器の移植に関する法律」に基づく「脳死」は「法律上の死」で厳密厳格な手続きを定めていますが,そうではない一般の脳死判定はまた別と考えられます.
谷直樹
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