弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

週刊ダイヤモンドのダビガトラン(商品名プラザキサ)の記事について

週刊ダイヤモンドのダビガトラン(商品名プラザキサ)の記事について_b0206085_9553828.jpgダビガトラン(商品名プラザキサ)で5名が死亡し,「出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はない」(改訂後の添付文書)とされています.

◆ 週刊ダイヤモンドの記事(カラダご医見番第58回)

週刊ダイヤモンドオンラインに「血液をほどよくサラリと脳卒中予防に新薬が登場抗凝固薬─ダビガトラン」[2011年08月22日] という記事が載っています.

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「今年1月に承認された抗凝固薬のダビガトラン(商品名プラザキサ)。「血液サラサラ」状態を保ち、血液の塊が引き起こす脳卒中を予防する。一般にはなじみが薄いのでピンとこないかもしれないが、この領域では半世紀ぶりの新薬。いろいろな意味で「待望の」という枕詞がつく薬なのだ。
(中略)
ダビガトランは治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない。「出血を懸念して処方を控えてきた患者にも使いやすい」(内科医)のだ。今回の承認は、血栓がらみの疾患の発症リスクが高い心房細動性不整脈の患者が対象だが、今後は脳卒中の再発予防にも使われていくだろう。」


このような調子で,記事は,ダビガトラン(商品名プラザキサ)の治療効果がワルファリンを上回り、なにより出血性の副作用が少ない,と手放しで褒めています.

◆ 感想

厚労省は,8月12日,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」(ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩製剤)と関連性を否定できない出血性副作用による死亡例5例があったことを公表し,添付文書改訂等を指示しました.

ブログ「厚労省,血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」服用患者での死亡5例公表」(8月13日)ご参照

5名の死亡例があったことと,それを受けて,添付文書が次のとおり改訂されたことは報道されていますので,週刊ダイヤモンド編集部と医学ライター井手ゆきえ氏は十分知っているはずです.

[警告]の項を新たに設け,
本剤の投与により消化管出血等の出血による死亡例が認められている。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。 本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。
と記載されました.
このことは,読者に伝えるべきでしょう.

また,服用患者に対し,鼻出血,歯肉出血,皮下出血,血尿,血便等に注意し,出血があった場合には直ちに医師に連絡するよう,呼びかけるべきでしょう.

今回の記事は,厚労省の対応によりプラザキサの販売が減少しないようにする意図があるのかもしれませんが,危険性について報じることがなく,「出血性の副作用が少ない」などと事実に反する内容になっていますので,さらなる出血死につながる可能性があります.
すみやかに訂正した方がよいと思います

谷直樹
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by medical-law | 2011-08-22 01:41 | 医療