「産科医療補償制度」でわかってきたこと

患者側弁護士は,訴訟よりむしろ訴訟前に解決すること目差しています.
さらに,医療事故をなくすることを目的として活動しています.
そして,「産科医療補償制度」は,事故防止に役立ちそうで,期待がたかまっています.

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読売新聞医療情報部・高梨ゆき子氏が,「[解説] 産科医療補償制度…診療の基本、逸脱次々 事例検証重ね再発防止を」(平成23年8月31日)を書いています.
事例の多くで基本的な診療に問題があることがわかり,全国の医療機関に報告書が配布され、注意喚起されたことが,事故を減らすための第一歩になったのではないか,と述べています.一部を紹介いたします.
「今回検討の対象となったのは、10年末までに補償が決まった108件のうち分析が終わった15件。その結果、〈1〉胎児心拍数の確認など出産の安全管理が不十分(8件)、〈2〉新生児蘇生法に問題(7件)、〈3〉陣痛促進剤の使い方が日本産科婦人科学会の診療指針を逸脱(6件)――などの問題があった。複数の問題が指摘された事例もある。
報告書をまとめた再発防止委員会の池ノ上克(いけのうえつよむ)委員長(宮崎大病院長)は「極めて基本的なことがきちんと守られていない」と話した。これらの問題が、脳性まひの原因とは必ずしも言えないが、「守っていれば、危険にもっと早く気づけたかもしれない」(池ノ上委員長)と指摘がある通り、基本の順守が安全性を高めるであろうことは明らかだ。
陣痛促進剤の使い方など、これまでも同学会が指針順守を求めてきたにもかかわらず、守られていない。現場では、必ずしも指針通りでない臨機応変な対応が必要となる場面もあるだろうが、第三者の専門家から見ても納得のいくものでなければならない。
この15例のうち2例は、同じ医療機関で起きたという。前例に学び診療を見直していれば、少なくとも2度目は起こらずに済んだ可能性がある。これについても、さらに十分な検証が行われるべきだ。
制度ができる前、「産科は特に、診療に問題がなくても結果が悪いと訴えられる」という医療側の嘆きをしばしば耳にした。それが、無過失補償制度が検討されるきっかけとなった。
しかし、今回の事例を見る限り、必ずしもそうとばかりは言えないようだ。一般に、精いっぱいの診療をしたのに不幸な結果となる事例はあるだろうが、防止策を講じる余地のある事例もあるということではないか。
当初、医療事故の患者団体からは「補償金で黙らせようという制度では解決にならない」と反発があった。実際、制度導入後も、補償対象であるのにかかわらず訴訟になった事例がある。
原告の一人は「医師は、産科医療補償制度で原因究明されるので、そちらに任せたいと言うばかりで、ほとんど事実関係の説明をせず、不信感を持った。本当のことを知る手段は裁判しかないと思った」と語った。事故そのものより事故対応への不信が根底にあることをうかがわせる。加えて、制度が信頼を得られていない結果とも言えそうだ。
個々の原因を公正に分析し、実効性ある再発防止策に生かす――このことなくして、制度の成功はない。対象範囲が重い脳性まひのみと限定的なことや、今のところ予想より大幅に対象者が少なく多額の剰余金が出ていることなど課題も多いが、事例検証を重ね、悲しい結果に至るお産を減らし、医療側と患者側の溝を埋める有効な仕組みに育てていく必要がある。(医療情報部・高梨ゆき子)」
産科医療補償制度により,学会のトップクラスの先生たちにも,産科事故の実態を知ってもらえたことは大きな成果だと思います.
医学医療の不確実性,限界のために,回避できないケースもあるでしょうが,普通にやるべきことをやるだけで十分回避できる産科脳性麻痺も少なくないと思います.
原因分析に基づく再発防止に期待いたします.
谷直樹
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