徳島県の病院,胆道の一部をしこりやむくみと勘違いして切断し,約1315万円で示談

◆ 事案
平成18年6月,60代の女性患者は,胆石による急性すい炎と腹膜炎のために,徳島県の病院で,胆のうの摘出手術を受けました.
胆のう周辺の炎症が激しく,医師は,胆道の一部をしこりやむくみと勘違いして切断しました.
医師は,手術中に,この勘違いに気付いて,処置し,患者は退院後に別の病院で患部を安定させる手術を受けました.
患者には,胆道が狭くなる後遺症が残りました.生活に大きな支障はありません.

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◆ 解決
外部委員による「県立病院医療安全対策委員会」は,平成19年,「軽・中度の後遺症が残る医療事故」として県の責任を認めました.
県は女性と損害賠償について協議し,約1315万円を支払うことで,平成23年7月に合意しました.
毎日新聞「手術ミス:県立三好病院,胆道切断女性と和解 /徳島」ご参照
◆ コメント
上記報道の件は私が担当したものではありません.
胆のう周辺の炎症が激しいため,担当医師が誤認したのでしょう.
ただ,医師は,炎症が激しいと誤認しやすいという知見をもっているはずで,ただちに,誤認しやすいから責任がない,ということにはなりません.
「誤認」には,一般に,「注意義務を尽くせば回避可能な誤認」と「注意義務を尽くしても回避不可能な誤認」があります.後者については責任は生じませんが,前者については回避のための注意義務を尽くしたかが問題になり,具体的事案に即して注意義務を尽くしていないと認定され,注意義務違反と結果との相当因果関係も認められると,責任を負うことになります.
「県立病院医療安全対策委員会」が県の責任を認めたことは,具体的事案に即し検討した結果注意義務を尽くしていないと認定された,ということを意味します.
一般に,「損害の金銭評価」は専門的な計算を必要としますが,示談は双方当事者の合意に基づくものですので,胆道が狭くなる後遺症についての損害評価も双方当事者の合意で自由にできます.
本件は,示談により適切に解決することができてよかったと思います.
谷直樹
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