静岡地裁平成23年9月27日判決(生検術についての説明義務違反)
頭部に腫瘍があると診断された患者(26歳,男性)が,2006年5月に鼻から内視鏡を入れて腫瘍組織を採取する「生検術」を受けた際,内頸動脈損傷によりクモ膜下出血を起こしました.
四肢機能を完全に失い,発語することはあるがコミュニケーションをとれず,生涯にわたり介護が必要な状態になりました.
◆ 判決
判決は,腫瘍を揺り動かしたことで,間接的に内頸動脈を損傷し,でクモ膜下出血を起こしたと認定しました.
判決は,生検術自体の過失や具体的な予見可能性は認めせんでした.
術者の注意で内頸動脈損傷を避ける方法がない上,担当医も危険性を認識するなど抽象的な予見可能性はあったと判断し,危険が現実化した場合の結果の重大性にかんがみ,その危険について説明すべきだったとし,説明義務違反を認定し,220万円の賠償金の支払いを命じました.
中日新聞「医療過誤、遠州病院に賠償命令 「説明義務違反」で220万円」(平成23年9月27日)ご参照
◆ コメント
上記事件は私が担当したものではありません.
検査の適応はあり,具体的な手技にミスがなければ,注意義務違反に基づく責任は否定されます.ただ,注意義務違反が否定されても,この判決のように説明義務違反が認定されることがあります.
重大な結果が生じ得る可能性がある場合は,患者には検査を受けか受けないかの選択権(自己決定権)がありますので,患者に危険性を説明することが必要です.
このような事案を救済するためにも,無過失補償制度を早く立ち上げてほしいですね.
谷直樹
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