東京地裁平成23年.9月28日判決,眼科医に務上過失傷害罪で禁固2年(報道)

◆ 事案
報道によると,元院長の眼科医師は,平成20年9月から21年1月,医療器具の滅菌など基本的な注意義務を怠たり,レーシック手術を行い,患者7人に細菌性角膜炎を発症させ,患者には不正乱視などの後遺症が残った事案です.
◆ 判決
近藤宏子裁判官は,「単に面倒くさいといった理由から手術前の手洗いを怠ったり、経費を惜しんで取り換え式の刃を使い回したりした」「被害者は失明の恐怖にさいなまれ、人生を狂わされた。刑事責任は誠に重い」として,眼科医に禁錮2年(求刑禁錮3年)の実刑判決を言い渡しました.

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◆ 報道
msn産経「レーシック手術集団感染 ○○元院長に禁錮2年判決 東京地裁」(平成23年9月28日)はつぎのとおり報じました.
「近視矯正のレーシック手術で患者7人に感染症を発症させたとして、業務上過失傷害罪に問われた○○(閉鎖、東京都中央区)元院長で医師、○○被告(49)の判決公判が28日、東京地裁で開かれた。近藤宏子裁判官は「被害者は失明の恐怖にさいなまれ、人生を狂わされた。刑事責任は誠に重い」として、溝口被告に禁錮2年(求刑禁錮3年)を言い渡した。
近藤裁判官は○○被告が手術の際、刃の交換や手袋の装着を行わなかったことについて、「多額の負債を抱える中で経済的利益を優先させ、時間のかかる丁寧な洗浄や滅菌を怠るようになった」と指摘。「発症者が出た後も対策を講じず、約3カ月半にわたり被害を拡大させた」と非難した。
判決によると、○○被告は平成20年9月から21年1月、衛生管理を徹底せずにレーシック手術を行い、東京都内に住む男性ら20~50代の7人に細菌性角膜炎を発症させた。
被害者弁護団によると、起訴内容に含まれなかった被害者は100人を超えるとされ、うち55人が溝口被告に計4億円以上の損害賠償を求め、東京地裁に提訴している。
○○被告は公判で「医師として社会復帰し、被害者への賠償に努めたい」と話していた。
元患者らは判決後、厚生労働省に○○被告の医師免許取り消しを求める要望書を提出。東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた会見で、元患者の加藤清香さん(30)は「手術時に手を洗うこともできない人に、医師が務まるのか」と怒りをあらわにしていた。」
◆ コメント
医療過誤で実刑判決が確定したのは,造影剤誤投与事件の静岡地裁昭和39年11月11日判決,東京高裁昭和40年6月3日判決,塩化カリウム液ワンショット投与事件の京都地裁平成17年3月14日判決,京都地裁平成17年6月13日判決,大阪高裁平成18年2月2日判決くらいです.
本件は,基本的な注意義務を継続的に怠り,重大な結果を広汎に発生させたことなどを考えると,適正な判決ではないかと思います.
谷直樹
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