神戸地裁平成23年9月27日判決(看護師のアラームへの対応の遅れ)
◆ 事案
患者(24歳,男性)は脳などに障害があり,平成19年5月に肺炎治療のため○○会が運営する○○病院に入院しました.
同年7月14日早朝,患者の気道を確保する装置がずれてアラームが鳴りましたが,夜勤の看護師3人は他の業務に従事しており、すぐに対応しませんでした.患者は呼吸が停止して意識がなくなり,翌年5月に死亡しました.
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◆ 判決
○○会側は「看護師の業務は多様で複合的。アラームへの対応の遅れが過失ということにはならない」などと主張しましたが,判決は,アラームへの対応が人命に関わる場合があると指摘してその主張を退け,アラームの対応を優先すべきだった,と過失を認め、同会に2250万円の賠償金支払いを命じました.
毎日新聞「損賠訴訟:川西の医療法人に2250万円賠償命令 過失を認定--神戸地裁 /兵庫」(平成23年9月28日)ご参照
◆ コメント
上記報道の件は私が担当したものではありません.
アラーム音にすみやかに対応しないと,アラームの意味がありません.
看護師には,命にかかわる場合があるアラーム音発生にすみやかに対応するという注意義務があります,
他の業務があることもわかりますが,少なくともなぜアラームがなったかの確認を行わないと,他の業務の方を優先すべきであると判断することはできないはずです.
アラームが鳴った原因を迅速に調べるという程度の対応は,最小限必要です.
本件の看護師は,業務の優先順位の判断を誤ったものと考えられます.
モニターのアラーム関連事故は,結構,報告されています.
日本看護協会の2009年11月27日のセミナーによると,事故報告書が2件,新聞記事(1997年-2007年)が17件あったとのことです.
心電図,人工呼吸器等のアラームが頻繁に鳴ることで,関心が薄れ,ときには確認を怠ることもあります.このような看護の実態は,注意義務違反を免責するものではありません.
本件にような結果が生じると,注意義務違反の責任を問われるでしょう.
日本看護協会は,平成22年に「一般病棟における心電図モニタの安全使用確認ガイド」を発表しています.その中には,「アラーム鳴動時の適切な対応体制」も記載されています.
モニター番を設けている病院もありますし,臨床工学士によるモニターアラームコントロールチームを設け,本当に必要なアラームを逃さないようにしている病院もあります.
判決を機に,再発防止を御願いしたいと思います.
「看護業務をめぐる法律相談」(新日本法規社)の拙稿「適切なモニター監視を怠ったことによる事故の責任は」612頁ご参照
谷直樹
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