ローズマリー・ギブソン氏,病院スタッフによる医療メディエーションの役割には限界がある

ローズマリー・ギブソン氏の「医療事故において医療メディエーションが担う役割はあるか」(週刊医学界新聞第2939号(2011年8月1日))を改めて読みましたが,大変的確な指摘を行っています.

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近時,医療事故に対する,院内の組織的取り組みが推奨され,病院スタッフによる医療メディエーションへの期待が高まっています.
しかし,そのことにより,当該医師が,医療事故被害者の前から姿を消し,他の人に対応をゆだねてしまう現象がみられます.
ローズマリー・ギブソン氏は,次のとおり述べます.
「医療過誤によって被害を受けた患者および家族は,医師と医療機関に正直な対応を求めています。それによって何が起こったのかを理解し,そしてその事象が被害者の健康や今後にどのような影響を及ぼすのかを理解したいと切に求めていることが,医療機関や研究機関の調査研究によって近年明らかになってきました。」
これは異論のないところでしょう.
さらに,原因究明,その報告,そして再発防止における医師の役割について,次のとおり述べます.
「事故を起こした当該医療者に対しては,その事象について責任ある対応を期待し,原因究明に献身的に義務を果たすこと,そしてその事故原因について情報が得られるたびに,継続的に患者・家族に伝えてほしいと望んでいます。当該医療者が医療システムの改善に責任を持って取り組み,その結果,将来的に他の患者が傷つくことがないようにと願っているのです。これらの議論では,医療が持つ性質上,医師や当該病院の責任者がリーダーシップを取り,ロールモデルとならなければなりません。」
そして,以下の点を指摘します.
◆その場限りの対応で終わらせない
◆明らかになった事実は担当医あるいは責任者が伝える
◆患者・家族は継続的なケアを必要としている
◆医療者自身にもまた,癒しが必要
◆解決を急がず,継続的な会話を
時間をかけて,患者・家族と対話を持ち続け,少しずつ癒されていく関係を構築することを通して,医療者もまた癒されることになる,と述べます.
「WHOの医療安全に関するカリキュラムでは,有害事象発生後における正直さと透明性の担保は患者の視点を大切にしたプロフェッショナリズムの重要性を反映しており,さらに医療安全のために,患者とパートナーシップを組む機会を医療者や病院に提供していると指摘されています。」
谷直樹
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