弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

立正佼成会付属佼成病院,薬剤の濃度を誤り患者重篤に

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読売新聞「胃検査の薬濃度誤る、80代女性が重篤」(2011年10月12日)は,次のとおり報じています.

「立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)は12日、80歳代の女性に対する胃の内視鏡検査の際、薬剤を誤使用し、女性を重篤な状態に陥らせる医療過誤が起きたと発表した。
 同院や報告を受けた東京都によると、医療過誤が起きたのは9月22日。女性は外来で同院を訪れて検査を受けた。その際、検査に使用する薬剤の濃度が誤っていたため、帰宅後、体調が悪化したという。現在は別の病院に入院し、治療中という。」


毎日新聞「佼成病院:80歳重篤に…酢酸の濃度調整誤り 東京・中野」(2011年10月12日)は,次のとおり報じています.

「東京都中野区の立正佼成会付属佼成病院(神保好夫院長、363床)は12日、先月実施した胃がんの女性患者(80)に対する内視鏡検査で、男性内科医師(34)が病変部分を見やすくするために使う酢酸の濃度調整を誤り、通常の約7~15倍で使用、腸管壊死(えし)などの重篤な状態にさせる医療過誤があったと発表した。病院はミスを認め女性や家族に謝罪し、先月末に経緯を東京都に報告した。

 会見した神保院長らによると、女性は健康診断で早期胃がんが見つかり先月22日、病変の範囲を確かめる内視鏡検査を受診。医師は色素を使う検査法を試したが不鮮明だったため、臨床検査技師らと相談、酢酸原液を薄めて使った。通常1.5~3%の濃度が適切だが、その後の調査で約23%という高濃度だったことが分かった。

 女性が検査直後から強い腹痛を訴えたため、検査技師は高濃度の酢酸が原因ではないかと指摘したが、医師は酢酸の影響を認識しておらず薬を処方し帰宅させた。女性は同日夜、別の病院に救急搬送され、壊死部分の切除手術を2度受けた。現在は集中治療室に入っているという。【佐々木洋、小泉大士】」
 

胃の内視鏡検査の際に使用する薬剤の事故は,内視鏡検査の数が多いので,これまでも結構報告されています.しかし,2003年に舞鶴赤十字病院で酢酸の原液を注入して死亡という事故がありましたが,検査薬の酢酸を誤って7倍以上高い濃度で投与した例は,珍しいのではないでしょうか.
酢酸はがんの部位を白く浮かび上がらせる検査薬として使われますが,この佼成病院ではその検査は行われていなかったそうです.また,内科医は院内にあった酢酸が高濃度だと危険,壊死が生じる,という認識を欠いていたようです.注意義務違反は重大で,結果も重大です.

【追記】
患者は,14日午後にお亡くなりになりました.ご冥福をお祈りいたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-10-12 16:15 | 医療事故・医療裁判