弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

薬害イレッサ訴訟東京高裁判決についての「声明」

薬害イレッサ訴訟東京高裁判決についての「声明」_b0206085_429691.jpg薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は,さきほど,「声明 (薬害イレッサ訴訟東京高裁判決について)」を発表しました.

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「本日、東京高等裁判所第10民事部は、東京地方裁判所の判決を覆し、国と企業の責任を否定する極めて不当な判決を言い渡した。

本判決は、承認前に集積された副作用報告症例について、当該医薬品との「因果関係がある可能性ないし疑いがある」というだけでは足りず、確定的に「因果関係がある」と言える状態に至らなければ、安全対策をとる義務が発生しないとするに等しい極めて特異な考え方を大前提に下されている。

これは、国や企業でさえ主張していない、医薬品安全対策に関する基本的な理解を欠いた前代未聞の立論であり、誤りという他はない。過去の多くの薬害事件は、企業と国が予防原則に基づいて、安全対策をとることの必要性を示しており、薬事法もこのような考え方に立って改訂され、添付文書の記載要領も改訂されてきたのである。本判決は、この到達点を根底から否定するものであり、本判決を前提とすれば、およそ薬害を防止することなどできない。

また、本判決はイレッサについて専門医限定が添付文書に加わったのは、第4版であるにもかかわらず、イレッサが当初より専門医のみが処方する薬剤であったとする誤った前提に立っているのみならず、専門医であれば、初版添付文書で十分に間質性肺炎の致死的危険性を理解しえたとするものであり、ソリブジン薬害事件の教訓を没却し、現場の医師に責任を転嫁する点においても不当である。

我々は、将来の医薬品安全対策、薬事行政に禍根を残す本判決の不当性を強く訴え、薬害イレッサ事件の全面解決まで闘い抜く所存である。
引き続きご理解とご支援をお願いする。 以上」


薬害訴訟の大きな歴史の中でみると,非常識な判決はなかったのと同じように扱われています.薬害肝炎訴訟の仙台地裁判決がその例です.

本判決は,企業の責任を否定した時点で,すでに失当です.
裁判長が,何もわかっていないことが明らかです.
薬害イレッサ問題は,国の責任をどのように構成するか,どこまで切り込んでどのように認めるか,にあったのに,全く見当外れの判決を下したわけですから,このような判決はなかったと同じに扱えばよいと思います.

歴史的にはなかったことと扱われるのは,破棄された東京地裁判決ではなく,見当違いの判断を下した高裁判決のほうでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-15 17:42 | 医療事故・医療裁判