中津川市民病院,内視鏡による熱凝固止血で大腸に穴をあけたことに気づくのが遅れ患者死亡,和解成立

2010年11月15日,極度の倦怠感や貧血を訴えて,肝硬変患者(女性,45歳)が中津川市民病院に入院しました.
同月17日,内視鏡検査で大腸に毛細血管の拡張と出血が見つかり,患部を焼く凝固止血処置が行われました.
担当医の30代の男性内科医師は,このとき,患者と家族に,凝固止血処置のリスクを十分に説明していませんでした.
この止血処置中に,医師は,誤って内視鏡で大腸内に穴を開けてしまいました(この時点では穴を開けたことに気づきませんでした.).
同月18日午前3時30分,患者の血圧が低下しました.医師は,点滴し,経過をみました.
同日午後2時,CT検査で止血箇所に穴が開いたことがわかり,緊急手術を実施しました.
同月19日未明,患者は敗血症による多臓器不全で死亡しました。
◆ 和解
中津川市民病院は.2011年11月15日,遺族と約3340万円の損害賠償金を支払うことで和解が成立した,と発表しました.
18日に血圧が低下した時点で大腸の穴を発見できなかったことから注意義務違反を認め,また説明義務違反も認めたとのことです.
今後は十分な説明を医師らに徹底させるなど再発防止策をとるそうです.
読売新聞「内視鏡で大腸内に穴、45歳女性が死亡…岐阜」(2011年11月15日)ご参照
岐阜新聞「中津川市民病院、医療過誤で女性死亡 3340万円賠償」(2011年11月15日)ご参照
◆ 感想
内視鏡による熱凝固止血は,普通に行われているので,リスクの認識も薄れ,説明もおざなりになってしまうこともあるのかもしれませんが,重大な事故につながることがあります.
出血事故と出血の発見の遅れは,医療事件でよくある類型です.本当に,これは繰り返さないでほしいと思います.出血のサインを見逃さずに,検査で出血箇所を突き止め,止血と輸血を行うば,死亡結果を防止できる場合が多いのですから.
内視鏡による熱凝固止血は,一般的な方法ですから,30代の男性内科医師でも経験は豊富でしょう.
ただ,それでも操作のしかたなどによっては,このように穴をあけてしまう,ということも起こります.それが,具体的な事案で,避けられない場合だったのか,避けられ得る場合なのかが,検討されます.
さらに,その後の対処が問題になります.
この事案では,血圧低下の時点で,内視鏡による熱凝固止血で穴をあけてしまうことも起こりうることですので,穴をあけてしまったのではないか,と疑って,午前3時30分という時間でも対処すべきだったでしょう.
和解が成立し,ほぼ1年という医療事件としては早期の解決ができ,よかったと思います.
谷直樹
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