弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

薬害イレッサ,上告にあたっての原告団・弁護団声明

薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団 は,2011年11月17日,「声明(薬害イレッサ訴訟東京高裁判決に対する上告にあたって)」を発表しました.
その内容は,以下のとおりです.

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本日、薬害イレッサ東日本訴訟原告団は、11月15日に東京高等裁判所第10民事部(園尾隆司裁判長)が言い渡した国と企業の責任を否定する極めて不当な判決に対し、最高裁判所に対し上告及び上告受理申立てを行った。

本判決の判断は、薬事法上、承認前に集積された副作用報告症例に関して、医薬品との「因果関係が否定できない」ものを副作用と扱い、これに基づき添付文書による警告等を行うことが求められているにもかかわらず、各副作用症例について「因果関係がある」と言える状態に至らなければ、安全対策をとる義務が発生しないというに等しい。

過去の多くの薬害事件は、企業と国が予防原則に基づいて安全対策をとることの必要性を示しており、薬事法や添付文書の記載要領も、このような考え方に立って改訂されてきたのである。本判決はこの到達点を根底から否定するものであり、本判決を前提とすれば、およそ薬害を防止することなどできない。

不法行為法、製造物責任法の解釈を誤り、薬害事件に関する多くの裁判例や筑豊じん肺最高裁判決、関西水俣病最高裁判決を初めとするこれまでの判例とも真っ向から反する違法・不当な判決である。

また、本判決は、イレッサの添付文書において「肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師」による処方という限定が加わったのは第4版からであるにもかかわらず、イレッサが当初より「癌専門医または肺癌に係る抗癌剤治療医」のみが処方する薬剤であったとする誤った前提に立って、初版添付文書で十分に間質性肺炎の致死的危険性を理解しえたとするなど、ソリブジン薬害事件の教訓を没却し、現場の医師に責任を転嫁する点においても極めて不当である。何より、承認から半年で180人もの間質性肺炎による死亡者を出し、添付文書の改訂と警告により、被害が減少したことを説明できない。

東京高等裁判所は、一審原告が求めた弁論も制限し、わずか2回の期日で結審して異例の短期間で判決を言い渡したが、本判決は、一審原告の主張の整理において初歩的な誤りがあり、その結果判断の脱漏があるなど、きわめて杜撰であり、審理不尽であることは明らかである。

本判決は、将来の医薬品の安全対策、薬事行政に禍根を残し、司法に対する国民の信頼を失わせるものであり、断じて確定させることはできない。
私たちは、薬害イレッサ事件の全面解決まで闘い抜く所存である。
引き続きご理解とご支援をお願いする。 以上
薬害イレッサ,上告にあたっての原告団・弁護団声明_b0206085_2224544.jpg

谷直樹
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by medical-law | 2011-11-17 22:24 | 医療事故・医療裁判