日弁連の法曹人口政策会議,司法試験合格者数1500人提言へ
毎日新聞「司法試験:「合格者1500人に減員を」日弁連、初の具体案提言へ」(2011年12月19日)は,次のとおり報じています.
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「日本弁護士連合会の「法曹人口政策会議」が17日の会合で、司法試験の年間合格者数について、現状の約2000人を1500人に減員するよう求める提言案をまとめたことが関係者の話で分かった。3000人への増員を目指す政府方針に反する初の具体的な削減案。日弁連は今後、地方の各弁護士会からの意見を踏まえ、来年3月の提言を目指す。
提言案は「法曹人口増員のペースが急激すぎ、司法の現場に深刻な問題を引き起こしている」と指摘。その上で「合格者をまず1500人程度にまで減員し、さらなる減員は法曹養成制度の成熟度などを検証しつつ対処すべきだ」とした。
新しい司法制度のあり方を議論した政府の司法制度改革審議会は01年、「国民の期待に応える司法制度」のためとして人的整備の必要性を掲げ、「10年ごろには、司法試験の合格者を年間3000人とすることを目指すべきだ」とする意見書を作成した。政府は02年、意見書に沿った増員計画を閣議決定した。
以後合格者数は増加し、10年には政府方針には届いていないものの、約2000人に到達。今年も同じ規模を維持した。しかし、それに応じた法的需要の拡大が進まず、新人弁護士の就職難が深刻化している。日弁連は今年3月、「司法試験の年間合格者数を現状より相当数減員すべきだ」とする緊急提言を発表していた。【伊藤一郎】」
2000人はもちろんですが,1500人でも多いと思います。
需要からすれば,1000人でやっと何とかよいくらいです.
もともと3000人という目標の算定根拠が間違っています.
当然,法科大学院も見直しが必要でしょう.
今年法曹資格を得た約2000人のうち200人弱が裁判官,検察官になり,1800人強が弁護士になるはずが,弁護士会への未登録者が約400人います.弁護士会に登録しなければ,弁護士としての仕事はできません.この約400人は,法律事務所に就職できなかったから,弁護士会に登録しないのです.就職できなかったのは,個人的資質の問題ではなく,法律事務所の側に新規採用の需要がなかったからなのです.
弁護士には,先輩弁護士の指導を受け,力をつけていく期間が必要です.
法律事務所に就職すれば,事務所の仕事を先輩弁護士の指導を受け,実際の事件を解決していく過程で,力をつけていくことができます.
法律事務所の側からすると,所属弁護士の人数は仕事に応じた適切な人数に抑えないと,経営上好ましくない事態になります.ですから,弁護士の新規採用人数は仕事量により,制約されます.
回転寿司経営にのりだした法律事務所が,約400人を半年のノキ弁として採用してもよい,と呼びかけていますが,法律関係の仕事が頭打ちで他業種に進出しようとしているのですから,約400人分の法律関係の仕事はありません.ですから,ノキ弁(法律事務所の軒先を借り,主に自分で仕事を探す弁護士)なのでしょう.
ソクドク(即独立開業)・ノキ弁もいれると,約2000人のうち500人くらいは,法律事務所への就職ができなかったものと思われます.そこで,1500人という数字になるのでしょうが,この数年,各法律事務所は拡張方向で精一杯の努力をして採用を増やしてきました.その採用が継続するものではありません.そのような事情も考慮し,需要と供給のバランスを判断すると,1000人という数字が一定の合理性をもつように思います.
もともと競争原理により,弁護士の質を向上し,市民の弁護士へのアクセスを容易にし,法的サービスを向上させるために,増員をしてきたのですが,需要のないところに過剰な供給をすると弊害が生じる可能性があります.
ソクドク・ノキ弁がでてきた時点で,法律事務所内で育成可能な適正な数以上の弁護士が輩出されたことが示唆されました.そもそも数が増えれば質が低下するのはどの世界でもみられる現象です.質が低下し,先輩による育成システムの限界を超えた状態では,マクロでみれば,弁護士の市民への法的サービスは低下します.
TPPにより,医療に過度の市場競争原理がもちこまれ,医療が悪化すると予測されているのと同じです.
市民への法的サービスの質を担保するには,弁護士の数は適正でなければなりません.
谷直樹
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