弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医学部新設に関する医師アンケート

医学部新設に関する医師アンケート_b0206085_1149297.jpg株式会社ケアネットは,2011年12月30日~2012年1月2日,医師1000人に大学の医学部新設に関するアンケート調査を行ったところ,以下の結果となった,とのことです.

1.ぜひ新設すべきだ 4%
2.新設してもよい 24%
3.新設すべきでない 64%
4.わからない 8%


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しかし,これは,医師の適正労働時間,女性医師の労働環境,医療の高度化への対応,医師の老齢化への対応,医師の偏在への対応,集約化の推進にも関係することで,定数と変数をどのようにとるかによって,答えが異なるので,この数字だけを一人歩きさせないほうがよいと思います.

たとえば,過労死との関連性が強いとされる月80時間以上の時間外労働をなくし,さらにEUの医師並の労働時間にすることを前提にすると,医師の増員は必須で,医学部新設を肯定する方向に傾くのではないしょうか.
また,多くの手術件数を経験する医師とそうでない医師の技術の差は歴然としていますので,集約化をすすめる必要があると思いますが,集約化しないで単に医師の数を増やすと,1人あたりの手術件数が減少し,技術レベルが下がることになるでしょう.

ところが,今回のケアネットの質問は,次のとおりでした.

「「大学医学部新設の是非」についてお尋ねします。

2011年12月20日付の日本経済新聞 夕刊によると、

『新潟、宮城、神奈川、静岡の4県の知事らが19日、中川 正春 文部科学相(※)を訪れ、医師不足解消のため、現在は認められていない大学医学部の新設を解禁するよう共同で要望した。中川 文科相は会談で「省内で専門家らが議論したが、結論は出ていない。厚生労働省とトータルで決めていきたい」と答えた。
要望書は「4県は人口あたり医師数が全国平均に比べて少なく、医師不足は深刻。現在の施設や教員数では既存医学部のこれ以上の定員増は見込めない」と強調。新潟県の泉田 裕彦 知事は会談後に「このままでは医者にみとってもらえない環境が想定される。大学での医学教育のあり方も見直してほしい」と話した。
文科省は今月、医学部新設の解禁の是非などを検討していた有識者会議の報告書を公表。来年1月中旬まで一般からの意見公募を始めている。報告書は医学部新設について賛否両論を併記し、方向性は示していない。』

とのこと。一方で、9月22日の読売新聞によると、

『茨城県医師会(斎藤 浩 会長)は21日、水戸市の県メディカルセンターで記者会見を開き、教員確保で全国の医師不足に拍車をかけるなどとして、医学部の新設・誘致は不適当と批判した。(中略)
医学部の新設・誘致に反対する理由として、県医師会は「教員確保のために医師を集めれば全国の医師不足に拍車をかける」「既存医学部で入学定員の増加を図っている」「中小医療施設や有床診療所などの経営に影響する」「医学生は卒業後に出身地へ戻る可能性もあり県の医師不足解消にならない」の四つを挙げた。』

とのこと。そこで先生にお尋ねします。

Q1.医学部の新設について、いかがお考えですか?

1.ぜひ新設すべきだ
2.新設してもよい
3.新設すべきでない
4.わからない

Q2.上記を選択された理由、その他コメント・ご意見をお願いします。


(※):中川 正春氏は、2012年1月13日に退任しています。」


埼玉をあげていませんが,新潟,宮城,神奈川,静岡,茨城などの医師不足を解消するために医学部を新設するのはいかがか,という趣旨の質問にとれますので,新設の前にやるべきことがある,と答えたくなのは当然でしょう.アンケートをとるなら,医師が不足している地域,診療科について,どのような対策が有効と考えるか,を聞いたほうがよかったと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-01-24 08:38 | 医療