弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

原子力損害賠償紛争解決センターの和解が滞っている理由

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政府の原子力損害賠償紛争解決センターが業務を開始して約5か月がたちますが,1月30日までに和解にこぎ着けたのは申立て747件中3件にすぎません.
これは,訴訟ではないのですから,申立人に厳密な損害立証のための書類を求めるべきではありませんし,原子力損害賠償の迅速かつ適切な実施のための制度ですから,東京電力は,紛争解決に協力すべきと思います.

日弁連は,「原子力損害賠償紛争解決センター申立第1号事件和解案に対する東京電力の回答に関する会長談話」を,2012年1月27日,発表しています.

「東京電力は、原子力損害賠償支援機構と共同で昨年10月28日「特別事業計画」を申請し、11月4日に政府はこれを認定しているが、本計画は、原子力損害賠償の迅速かつ適切な実施を目的とする東京電力への政府資金援助の条件とされ、東京電力は、本計画に盛り込まれた諸事項を遵守し、確実に実施する義務を負っている。本計画で東京電力は「5つのお約束」を掲げ、その中で「和解仲介案の尊重」をうたっている。

にもかかわらず、東京電力は、和解案の一部について受諾する姿勢を示しながら、慰謝料や仮払い補償金の精算など被害者にとって重要な点について、これを拒絶したことは、政府及び国民に対する約束を守っていないといわざるを得ない。

また、原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針を超えて提示された慰謝料についても、中間指針の基準を超えていることを理由にその支払を拒絶しているが、その中間指針自体において、「本件事故による原子力損害の当面の全体像を示すものである。

この中間指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東京電力株式会社との間における円滑な話し合いと合意形成に寄与することが望まれるとともに、中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である。

東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行うことを期待する。」と明記されているのである。

このような東京電力の対応は、原子力損害賠償紛争審査会及びその下に設置された原子力損害賠償紛争解決センターという原子力損害賠償解決制度そのものの意義を十分に理解しないものであって極めて遺憾である。

当連合会は、東京電力に対し、仲介委員の示した和解案を尊重し、以上のような条項を受諾することを求めるとともに、政府に対しても、東京電力に対してその姿勢を改めるよう、指導、監督を徹底することを求める。」


谷直樹
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by medical-law | 2012-01-31 13:49 | 脱原発