徳島地裁平成24年1月30日判決,患者リフト転落死事故で工作物責任に基づき請求認容

入院患者(70代男性)は,2010年4月,3階の食材運搬用リフトの開口部からに転落し,1階に止まっていたリフトの屋根に転落して死亡しました.
リフトの開口部は廊下に面し,高齢の患者や見舞客が近くを通る状態でしたが,鍵はかかっていませんでした.
◆ 判決
徳島地裁平成24年1月30日判決は,リフトには工作物が通常備えるべき安全性が欠如し、設置保存の瑕疵があった,と病院の工作物責任(民法717条1項)を認め,2870万円を遺族に支払うよう命じました.
毎日新聞「徳島・入院患者リフト転落死:病院に2870万円賠償命令--徳島地裁 /徳島」(2012年1月31日)ご参照
◆ 感想
民法717条1項は,「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と定めています.
「土地の工作物」は,「土地に接着して築造した設備」と解釈されています(大審院大正元年12月6日判決).建物,その附属物・従物,水道設備,自動販売機などが含まれ,本件のリフトも含まれます.
転落すれば死亡する危険のあるリフトの開口部が,廊下に面し,高齢の患者や見舞客が近くを通る状態であって,鍵はかかっていなかったことから,判決は,民法717条1項の「瑕疵」があると判断したものです.
病院開設者は,このように,医師の診療行為の内容だけではなく,病院設備の瑕疵についても責任を負います.
谷直樹
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