弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

愛媛県の病院,永久気管孔を塞いだ事故で調査報告書

愛媛県の病院,永久気管孔を塞いだ事故で調査報告書_b0206085_13225437.jpg愛媛県立中央病院で,看護師が患者の永久気管孔を塞ぎ患者が窒息死した事故について,同病院は,2012年2月7日,看護教育や情報共有の強化などの再発防止策を盛り込んだ報告書をまとめ,市保健所に提出しました.

◆ 事故原因

「報告書は、事故原因について、担当看護師に首の切開口が「永久気管孔」との認識がなく、フィルムシートで塞いだこと、と結論。臨床現場での看護教育が不十分で、カルテに依存し看護師間や医師との情報共有が不足していたとした。」(毎日新聞「県立中央病院の医療事故:再発防止策まとめる 報告書提出 /愛媛」(2012年2月8日))

「報告書によると、患者のカルテに「咽頭癌(がん)」「気切孔あり」との記述があったが、「永久気管孔」とは書かれておらず、看護師が口と鼻からも息ができると思い込んでいたことなどが事故原因と断定。」(読売新聞「患者情報の共有不十分」(2012年2月8日)


毎日新聞は,看護教育不十分,カルテ依存を主眼に報じていますが,読売新聞は,カルテに「永久気管孔」と記載がなかったことを指摘しています.

◆ 再発防止

毎日新聞の報じる再発防止は次のとおりです.
(1)医師が講師を務める研修の実施
(2)カルテに加え、対面・口頭での再確認の徹底
(3)全業務の見直しを進める改善推進本部設置

読売新聞の報じる再発防止策は次のとおりです.
(1)カルテに依存し過ぎず、医師や看護師間で申し送りを行う際などに口頭で患者情報を再確認する
(2)カルテの記載法指導や看護教育の強化

◆ コメント

上記報道の件は私が担当したものではありません.
私は,「愛媛県立中央病院,患者の永久気管孔を塞ぎ窒息死」で次のとおり書きました.

「喉頭を摘出し永久気管孔を開けている患者は,稀ではありません.ただ,脳神経外科では,あまりみなかったのでしょう.
たしかにこの20代の担当看護師の思いこみは軽率ですが,永久気管孔を開けている患者であることは,医師・看護師で共有すべき情報です.医師は,看護師に伝えるべきと思います.」

医師が看護師に伝えていないことに問題があると思います.

事故調査報告書は,プライバシーにかかわる部分を除いて,病院のサイトなどで公表していただくと,他の病院でも事故防止に役立てることができます.愛媛県立病院のサイトに未だ調査報告書が掲載されていないようですが,掲載いついてご検討いただきたくお願いいたします.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-09 04:23 | 医療事故・医療裁判