弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院が患者の勤務先の総合病院にHIV検査結果を漏示し,患者(看護師)が退職させられた事案,第1回弁論

大学病院が患者の勤務先の総合病院にHIV検査結果を漏示し,患者(看護師)が退職させられた事案,第1回弁論_b0206085_13181620.jpg大学病院の医師が患者の勤務先の総合病院にHIV検査結果を漏示し,患者(看護師)が退職させられた事案,提訴」で書いた訴訟の続報が報じられていました.

毎日新聞「HIV訴訟:病院側が反論「退職強要していない」」(2012年2月17日)は,次のとおり報じています.

「検査結果を勤務先に伝えた病院は「医師が『紹介元に結果を知らせないといけないね』と口頭で看護師に説明していた」と主張。勤務先の病院は「退職を強要したわけではなく、治療に専念させる目的で休むように言った」と反論し、請求棄却を求めた。」

上記報道の件は私が担当したものではありません.
検査した大学病院は,患者の診療情報を,患者(看護師)の勤務先の病院に伝えた事実は認めているわけです.その上で,患者(看護師)に説明して同意を得ていたから違法ではない,と言いたいのでしょう.
この点,民事訴訟では,言った,言わないが争いになると,言ったと主張する側が立証責任を負いますから,説明し同意を得ていたという事実を主張する側が,その証拠を提出し立証する必要があります.
しかも,HIV検査結果を紹介元に知らせないといけないことはありませんので,大学病院の主張は不合理です.また,HIV検査結果を伝えるというデリケートなことについて,同意書面がない,というのは不自然です.

勤務先の総合病院が,休職を求めること自体不合理で,権利侵害にあたります.さらに,それが事実上退職せざるをえない状況をつくりだしたとすれば,退職強要と認定できるでしょう.

訴訟の今後に注目したいと思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-17 22:31 | 医療事故・医療裁判