名古屋地裁平成24年2月17日判決,藤田保健衛生大病院医師のコイル塞栓術のワイヤ操作の過失を認める

名古屋地裁(第4部)平成24年2月17日判決は,ワイヤが脳動脈瘤に穴を開けた事案で原告の請求を認容し,藤田保健衛生大病院を開設する学校法人藤田学園に,約1億7015万円の支払いを命じました.

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◆ 事案
女性(57歳)は,2006年4月に受診し,脳の血管に動脈瘤が見つかました.
女性は,2006年8月,藤田保健衛生大病院で脳動脈瘤の予防治療として,カテーテルを通して動脈瘤内にコイルを詰め,破裂を予防する血管内手術を受けました.
その際,動脈瘤に穴が開き,それが原因でくも膜下出血になり,出血性脳梗塞を発症して、左半身麻痺などの後遺障害を負いました.
ワイヤの先端部が動脈瘤の壁に穴を開けた可能性が極めて高い,と名古屋地裁判決は指摘しました.
◆ 過失
名古屋地裁判決は,「カテーテルを通るワイヤが進みすぎないようにするための措置が不正確だった」として,執刀医の過失を認めました.
◆ 説明義務違反
名古屋地裁判決は,執刀医が手術前の説明で,別の治療法である開頭手術について,技術的に比較的容易であり,選択する患者が多いという利点を十分に説明しなかった点も認めました.
女性のような動脈瘤であれば「カテーテルを使った手術より,頭蓋骨を開け,クリップで血管の膨らみを止める手術の方が,リスクは高くなかった」とし,女性が手術を選択するために必要な情報提供を怠った,とも指摘しました.
「担当医師は,危険性は同じ程度との説明しかしなかった」と説明義務違反を認定し,さらに「説明を尽くせば原告は開頭式を選び,障害を負わなかった可能性が高い」と相当因果関係を肯定する判断を示しました.
毎日新聞「医療過誤:藤田保健衛生大学に1億7015万円支払い命令」(2012年2月18日)ご参照
日刊スポーツ「脳手術失敗…病院に1・7億円の賠償命令」(2012年2月17日)ご参照
中日新聞「手術ミス認め1億7千万円賠償命令」(2012年2月17日)ご参照
◆ コメント
上記報道の件は私が担当したものではありません.
脳動脈瘤の予防治療としてコイル塞栓術が行われ,出血を起こし,死亡したり重度の障害を残すケースがあります.本判決は,そのようなケースの解決の上で参考となるものです.
谷直樹
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