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大学における研究不正行為について

大学における研究不正行為について_b0206085_10174732.jpg◆ 研究不正行為(データ捏造・改竄) 

東京医科歯科大学は,2012年2月24日,医学部附属病院の○○助教の研究不正行為を発表しました.

発表された「東京医科歯科大学における研究不正行為について」は,以下のとおりです.

「東京医科歯科大学では、医学部附属病院に所属する○○助教(以下「○○助教」
という。)が発表した論文の一部のデータに研究不正行為(論文データの捏造、或いは改竄)の疑いがあるとする旨の通報があったことを受けて、研究不正に関する調査委員会を設置して調査を行ってきました。
この調査の結果、○○助教が発表した三つの論文に関して、研究不正行為の事実があったと認定しましたので公表します。
研究不正行為の事実があった論文及び調査委員会の調査内容については、下記のとおりです。



1.研究不正行為の事実があった論文について
(1)第一論文
題名:Toll-Like Receptor2 Mediates Apolipoprotein CⅢ-Induced Monocyte Activation
雑誌:Circulation Research 2008,103:1402-1409
(2)第二論文
題名:Apolipoprotein CⅢ Induces Monocyte Chemoattractant Protein-1 and Interleukin 6 Expression Via Toll-Like Receptor 2 Pathway in Mouse Adipocytes
雑誌:Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 2010,30:2242-2248
(3)第三論文
題名:Apolipoprotein CⅢ Links Hyperlipidemia With Vascular Endothelial Cell Dysfunction
雑誌:Circulation 2008,118:731-742


◆ 調査委員会メンバー

調査委員会のメンバーは以下のとおりで,アマチュア野球の審判員を40年努めた清水幹裕弁護士も加わっています.

委員長 森田育男:理事(研究担当)
湯浅保仁:医学部長
大野喜久郎:大学院医歯学総合研究科教授(前医学部長)
烏 山 一:大学院医歯学総合研究科教授
磯部光章:大学院医歯学総合研究科教授
桐野高明:独立行政法人国立国際医療研究センター総長
清水幹裕:清水法律事務所弁護士

◆ 再発防止

東京医科歯科大学は,今後に向けた具体的な再発防止策については,以下の4点をあげています.

「今回の調査結果を踏まえ、研究活動における不正行為の再発を防止するため、以下の方策を実施します。
ア.本学教職員及び学生に対して、研究活動における不正行為の防止及び研究費の不正使用の防止に関する意識を喚起し、不正行為防止対策を徹底する。
イ.研修会等により、研究者が遵守すべき基本的義務に関する研究倫理教育を徹底する。
ウ.研究指導者に対して、研究に対するチェックを日常的に行わせる。
エ.研究ノート等論文の根拠となるデータは、論文を発表した後10年間は各研究室の責任において保管することを義務付ける。」


時々,このようなデータ改竄・捏造が報道されますが,研究雑誌に掲載されてしまうとその雑誌を回収することはできませんので,論文の影響を完全に払拭するのは難しいでしょう.事前に防止するしかないのですが,データ改竄・捏造防止の特効薬はないようです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-25 05:23 | 医療