大学が系列病院から麻酔科医を引き上げ

「医大麻酔科には40人の医師が所属しているが、女性が4割を占めている。さらに6人が産休に入ったことなどから、同医大の山蔭道明教授は「医師不足の中で、(派遣を)引き上げざるを得なくなった」と説明する。」
苫小牧民報「苫小牧市立病院、麻酔科常勤医不在に? 札医大が派遣打ち切り打診」(2012年 3月1日)ご参照
たしかに,麻酔科医は,勤務時間の関係と思いますが,女性が多いです.
このように女性医師が多いと出産などの事情が重なり医師不足に陥ることも,当然予見可能で対処もできたはずなのに,突然このような事態になったことは疑問です.
女性医師が増えていることを考えると,前と同じ人数では医師不足になることは明らかです.
なお,苫小牧市立病院については,「一昨年、苫小牧市立で起きた医療事故の対応をめぐり、医師と病院側の信頼関係にひびが入り「そういう対応の病院では勤務できない、という医師もいる」(山蔭教授)。」そうです(前掲新聞記事).
そのような事情で真っ先に苫小牧市立病院への派遣が打ち切りになったのかもしれません.
なお,別の地域の別の病院の話ですが,出来の悪い医師を厳しく叱ったら辞めてしまい,大学からその科の医師派遣を打ち切られた,ということを院長先生から聞いたことがありますから,派遣打ち切りにはいろいろな事情があるのでしょう.
ともあれ,麻酔常勤医が不在ということは,緊急手術ができないことを意味し,東胆振の中核病院としての役割を担えないことになります.
以前,国立がんセンター中央病院で10人の常勤麻酔科医のうち5人が退職し,手術数を制限せざるを得なかったこともありましたが,その後常勤医は14人となり体制が確立されました.
雨降って地固まることを期待いたします.
市議会で,「岩倉博文市長は「患者、市民に与える影響を最小限にするため、昨年11月から全力を挙げて取り組んでいる」と説明。常勤医師の確保については「報告できる段階ではないが、動いている案件もある」などと答え、継続して医師確保に力を入れる考えを強調した。」とのことです.
苫小牧民報「外科手術への影響必至 苫小牧市立病院常勤麻酔医不在問題」(2012年3月3日)
【追記】
苫小牧民報「苫小牧市立病院 5月までは麻酔科常勤医確保」(2012年3月6日)は,次のとおり報じています.
「苫小牧市立病院の麻酔科常勤医が不在になるとされていた問題で、苫小牧市の岩倉博文市長は5日記者会見し、4月から2カ月間は、1人の常勤医確保に見通しが立ったことを発表した。苫小牧市医師会と協力して、市内医療機関からの応援態勢も協議しており、「地域医療を守るため、最大限の努力をしていく」などと述べて診療体制の維持に全力を挙げる考えを強調した。
会見には市医師会の沖一郎会長も同席した。札幌医科大学からの医師派遣で3人の常勤態勢だった麻酔科は、今月中は常勤医2人と、札医大関連病院から出張医が週1日か、2週に1回派遣する方向で対応する。
4、5の2カ月間は、札医大が常勤医1人を派遣することで了承を得た、という。さらに市内などの医療機関で、市医師会に所属する11人の麻酔科医の協力を得る形で、こうした医師がシフトを敷いたり、「札幌からも応援してもらう」(沖会長)方向で調整を続けている。
これらの態勢を取ることで、夜間や休日、緊急時の手術に関して、沖会長は「(市立以外の)基幹病院や外科系医療機関でどのくらいできるのか調節、精査している。手術ができないことではない」と説明。基幹病院としての機能維持に協力する考えを強調した。
6月以降の常勤医確保や診療体制は、岩倉市長は「報告できる段階ではないが、常勤医確保に向けて万全を期していきたい」と述べるにとどめた。
また、市長は札医大が派遣引き揚げの方針を示したことについて、医師不足のほか、一昨年6月の医療事故に対する「病院の対応も影響している」と説明。十分な事故解明を行わず、麻酔による事故として議会報告したことについて「麻酔科医師、大学医局関係者に大変不快な思いをさせ、心からおわびしたい」と不適切な対応を陳謝した。沖会長も「(病院側の対応は)医師の立場から、麻酔科医が病院から離れていくことにつながる可能性は十分にあり得た」との認識を示した。
こうした状況を踏まえ、事故原因や過失の有無などを再検証する医療事故調査検討委員会を中旬に設置することを改めて説明。医療事故に対する院内組織の強化にも言及した。」
苫小牧民報社「「原因の特定困難」 苫小牧の市立病院事故調査委員会が報告」(2012年5月25日)は,次のとおり報じました.
「苫小牧市の岩倉博文市長は25日、臨時記者会見を開き、市立病院医療事故調査検討委員会の報告書を受け、再発防止など院内の医療安全体制の確立に向けた取り組みの促進を強調した。
事故は2010年5月に発生。人工関節置換手術を受けた患者に術後、障害が出たもので、院内の情報共有や検証が不十分なまま、「麻酔による事故」と当初、市議会などに報告した。
調査委が原因と当時の対応を再検証し、24日の委員会で報告書をまとめた。会見に同席した沖一郎委員長は、事故原因について「時間が経過し、特定は困難との結論に至った」と説明。一方で「情報共有や事故後の管理部門の不適切な対応が問題を大きくした」として、院内体制確立の必要性を提言したと述べた。
市長は、医療安全体制構築に向けた行動計画を策定したことを説明し、「体制を立て直し、市民や医療関係者に信頼される病院づくりに取り組む」と強調。「患者や、一連の対応で医療関係者にご迷惑を掛けた」と謝罪した。」
谷直樹
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