弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

福岡地裁小倉支部平成24年3月22日判決,不適切な位置の固定具をすみやかに除去しなかった事案

◆ 事案

患者(68歳,女性)は,2005年6月,○○整形外科医院で,ヘルニア手術を受けた直後から,右足などにしびれや痛みを感じました.
判決は,「手術時に腰椎の固定具が不適切な位置に挿入されたことが原因で、神経が圧迫され、まひが生じた」と認定しています.
患者は,その後,別の病院で固定具を除去する再手術を受け痛みは取れましたが,右足に麻痺が残りました。

◆ 判決

判決は,腰椎の固定具が不適切な位置に挿入した医師について過失を否定しましたが,しびれや痛みが生じたあとの医院の対応について過失を認め,翌日に再手術をしていれば防止できたとして因果関係も認め,約1620万円の支払いを命じました.
ました.

日刊スポーツ「ヘルニア手術で麻痺 1600万賠償命令」(2012年3月22日)ご参照

◆ コメント

報道の件は私が担当した事件ではありません.
措置までの時間が遅ければ神経損傷がおきるので,このように固定器具を入れた後,しびれなどの神経症状を訴えたときの対応が問題になります.
普通は,右足などにしびれや痛みを感じ,看護師などに症状を訴えると,医師が診察し,再手術になるのですが,本件は手術直後から症状があったのにどうして再手術が行われなかったのでしょうか.
雑誌,裁判所サイトに判決が公表されれば,よく読んでみたいと思います.

【追記】

毎日新聞「損賠訴訟:岡垣の女性、手術後に障害 病院側の過失認定--地裁小倉 /福岡」(2012年3月23日)によれば,椎間板ヘルニアの手術を受けた直後から右足を曲げられない(右下垂足)状態となった,とのことです.また,判決は,「医師が手術中に適切な挿入位置なのか確認するのは不可能だが,術後の患者の筋力低下を受け,手術の翌日には器具を抜く手段を提案するべきだった」と指摘したとのことです.

谷直樹
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by medical-law | 2012-03-23 08:21 | 医療事故・医療裁判