弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

福岡地裁平成24年3月27日判決,脳梗塞の前兆の発作非専門医でも診断義務あり,村上華林堂病院に賠償命令

医療は専門化していますので,医師が他科の疾患を疑うことができたか(疑い診断)かが,よく争いになります.

福岡地裁平成24年3月27日判決が報道されていますので,ご紹介いたします.

本件は,素人である飲食店の店主が脳梗塞を疑って救急車を呼んだにもかかわらず,救急搬送先の村上華林堂病院の医師が脳梗塞の疑い診断を行わなかった事案です.脳梗塞の疑いが除外診断されたために,診断が15日後になってしまった事案です.

救急患者を受け入れている病院の医師は,専門外の疾患といえども,せめて重大な疾患の疑い診断ができる程度の能力は必要でしょう.

日本経済新聞 「非専門医にも診断義務 脳梗塞の前兆発作で福岡地裁判決」(2012年4月17日)は,次のとおり報じています.

「脳梗塞の前兆の発作を医師が見逃し治療を怠った結果、脳梗塞で半身まひなどの後遺症を負ったとして福岡市の70代女性が、救急搬送先の同市の村上華林堂病院側に約8千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は16日までに440万円の支払いを命じた。

 消化器などの担当医が対応したため、専門外でも脳梗塞を疑う発作と診断する義務があったかが争われ、増田隆久裁判長は「発作は一般的な医学文献に載っており、非専門医でも診断すべきだった」と判断した。判決は3月27日に言い渡され、確定した。

 判決によると、女性は2009年3月、飲食店での支払時に硬貨を何度も落としたため、店主が脳梗塞を疑って119番通報し搬送されたが、同病院の医師は発作と診断せず、15日後に別の病院で脳梗塞と分かった。

 判決は、発作だと診断していても脳梗塞を完全には防げないとしたが、重篤な後遺症の発生を免れた可能性はあったと認定した。

 病院側は「十分な診療をしたと考えているが、紛争の長期化を避けるため控訴しないことにした」とコメントしている。〔共同〕」


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-17 08:47 | 医療事故・医療裁判