弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋高裁金沢支部平成24年4月18日判決,富山医科薬科大(現富山大)付属病院の感染症事案,患者側勝訴

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名古屋高裁金沢支部が,2012年4月18日,医療過誤事件で富山大学側の控訴を棄却したことが報じられています(チューリップテレビ).
これは,病院が設置した事故調査委員会と裁判所の判断が分かれた事案です.

◆ 事案

患者(女性,当時20歳)は,2004年9月富山医科薬科大(現富山大)付属病院で,大腸全摘出手術を受け,MRSA腸炎による敗血症性ショックで同年12月12日死亡しました.

◆ 争点と判断

病院は,遺族の要請で,医療事故調査委員会を設置し,2005年9月に「明らかな医療過誤があったとは判断できない」との調査結果をまとめました.病院側は,治療薬を投与した12月11日より早くに感染症を疑うのは困難だったなどと争いました.

患者側は,発熱や下痢などの症状があり感染症が十分に疑われるのに担当医が早期に治療薬の投与などの処置を開始する注意義務を怠った,と主張しました.

富山地裁平成23年3月30日判決は,12月4日の時点で患者には発熱や多量の下痢,脱水などの症状があったことから,感染症にかかっていた可能性が高く治療を開始すべきだった,とし,また患者の死亡と担当医の治療の過失とには相当因果関係がある,と認定し,富山大学に約7500万円の賠償を命じました.

富山大学は,平成23年4月11日,名古屋高等裁判所金沢支部に控訴していましたが,結局,このように控訴審も富山大学の主張がいれられず,患者側勝訴となりました.
やはり,発熱や下痢などの症状がある以上感染症を疑うべきで,本件は感染症に対する対応が遅れていたものと考えられるでしょう.

【追記】

最高裁第二小法廷は,富山大学の上告を退けました.


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-18 17:54 | 医療事故・医療裁判