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総務省「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」に関する日弁連コメント

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日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年4月20日,総務省「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」に関する日弁連コメントを発表しました.

「本日、総務省より、「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」が公表された。同評価書についての当連合会のコメントは、以下のとおりである。

本政策評価書は、司法制度改革の下に始められた法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する法務省及び文部科学省の政策を対象としたものであるが、実地調査及び意識調査の実施にあたっては当連合会も調査対象として協力しており、現在の弁護士の実情を一定程度反映したものとなっている。

特に、法曹人口の拡大については、一方で、いわゆるゼロワン地域の解消や国選弁護人契約の増加等、地域的にも、また社会の様々な場面でも法曹の活躍が広がったとしつつ、他方で、司法制度改革審議会意見書が予見したほどの法曹・法的サービスへの需要の拡大や顕在化を確認することはできなかったとした上、司法試験合格者3000人目標未達成による支障は認められず、現状の2000人規模の合格者数でも就職難の発生やOJT不足などの課題が指摘されていると述べて、数値目標の見直しを勧告した。政府機関が法曹人口の政策目標の見直しを勧告した意義は大きい。当連合会も、ほぼ同様の認識の下、本年3月に司法試験合格者数の減員を求める意見を公表したところであり、今後の法曹養成制度、法曹人口に関する議論において本政策評価は十分参照されるべきである。

法科大学院の教育については、社会人の積極的な受入れや理論と実務の架橋を意識した法律実務基礎教育など法曹養成制度改革の理念に沿った取組が見られるとされた一方、教育の質の向上、とりわけ未修者教育の一層の強化を推進すること、成績評価と修了認定の厳格化を一層推進すること、共通的な到達目標モデルを踏まえた到達目標を速やかに策定することなどが勧告されている。これらの点も、概ね当連合会の見解と共通するものである。

法科大学院の入学定員については、各法科大学院における入学定員の適正化が進んだものの、定員充足率が80%を下回った法科大学院が増加したことを受けて、実入学者に見合った更なる入学定員の削減や、さらには、法曹養成制度の理念、地域バランス等も勘案しながら、他の法科大学院との統廃合を検討すること、定員削減にあたっては未修者の確保を配慮することなどが勧告されている。当連合会としても、地域適正配置と学生の多様性確保の観点を踏まえた統廃合と定員削減を提言しており、上記のほか大都市の大規模校についても大幅な定員削減を求めている。

司法試験については、情報提供の更なる推進が指摘される一方、5年以内3回の受験回数制限の見直しについては勧告が見送られた。当連合会は現在の合格率の低迷の下で、当面5年以内5回等への受験回数制限の緩和を緊急提言している。

なお、当連合会は、すでに2011年1月25日付けの「『法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書』に対する意見書」で、法曹養成制度の改革に関する政策は法科大学院と司法試験だけでなく、その後の司法修習や資格取得後の研修等の法曹養成過程全体を視野に入れなければ適切な評価はできず、法務省及び文部科学省の施策に対する政策評価では限界があることを指摘していることを付言する。」


※ 法曹人口及び法曹養成制度の改革に関する政策評価<評価の結果及び勧告


谷直樹
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by medical-law | 2012-04-21 00:23 | 弁護士会