弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

広島高裁松江支部平成24年5月16日判決,警報音に気づかない鳥取大医学部付属病院に約2億530万円賠償命じる

報道によりますと,急性細気管支炎で鳥取大学医学部附属病院に2002年2月入院した,当時9か月の男児に,心拍呼吸モニターとサチュレーション・モニター(血中酸素濃度に異常が出ると警報音が鳴る装置)がつけられ,ナースステーションに警報音で知らせるようになっていましたが,心拍呼吸モニターの警報音は,うるさいという理由で切られており,サチュレーション・モニターが鳴ったかが争われた事案のようです.

1審では,患者側は,サチュレーション・モニターが鳴ったことの立証に成功しませんでしたが,鳥取地裁米子支部平成21年 7月17日判決は,サチュレーション・モニターが鳴らないことも想定した監視措置を取っていなかったことを認定し,約2億510万円の支払いを命じました.つまり,サチュレーション・モニターが鳴らないことも想定し心拍呼吸モニターの警報音を切らないことを求めたのではないかと思います.

広島高裁松江支部平成24年5月16日判決は,患者側が請求した装置メーカーの調査などに基づき「鳴っていたが医師らが気付かなかった」と新たに認定し,「異変から発見まで13分を要したことは重大な落ち度」との判断から,約2億530万円の支払いを命じました.

心拍呼吸モニターの警報音を切った状態で,サチュレーション・モニターが鳴ったのに13分間気づかなかったのは,重大な過失と思います.

上告の理由は,民事訴訟法312条に定められています.

「第三百十二条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。

2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。

一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。」

本件に上告理由はあるのでしょうか?

谷直樹
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by medical-law | 2012-05-18 01:28 | 医療事故・医療裁判