弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

市立病院,24年前のガーゼ1枚取り残し事案で230万円和解(報道)

静岡新聞「腹部に20年ガーゼ 湖西病院、医療ミスで和解」(2012年6月8日)は,次のとおり報じています.

「湖西市の市立湖西病院が24年前、胆のうの摘出手術を行った同市内の男性患者=当時(34)=の腹部にガーゼを取り残す医療ミスを起こしていたことが7日、分かった。男性は市に慰謝料を求める調停を浜松簡裁に申し立て、市が230万円を支払うことで既に和解が成立している。
 市によると、男性は1988年11月、湖西病院で胆のうの摘出手術を受けた。この手術で腹部を切開した際、体内にガーゼ1枚を誤って取り残したとみられる。
 男性は20年間にわたって通常の生活を送っていたが、2008年に体調不良を訴えて同病院へ再び通院。検査したところ、ガーゼの周囲にこぶ状の腫瘍ができていることが分かり、腫瘍とガーゼの摘出手術をあらためて行ったという。市は7日の市議会6月定例会で和解成立を報告した。同病院の寺田肇院長は「患者に多大な辛苦を与え、大変申し訳ない。今後はミスが再発しないよう万全を期したい」としている。」


一般に,不法行為に基づく損害賠償請求権に関する20年の期間制限(724条後段)は, 除斥期間で,当事者が援用しなくても裁判所は請求権が消滅したものとして判断すべきである,とされています(最高裁平成元年12月21日判決,民集43巻12号2209頁).
本件のような場合それでは不合理ですので,最高裁平成16年)10月15日判決(民集58巻7号1882頁),最高裁平成18年6月16日判決(民集60巻5号1997頁)から,2008年に体調不良を訴えて同病院へ再び通院し検査しガーゼの周囲にこぶ状の腫瘍ができていることが分かった時点から起算すると解することができます.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-09 18:06 | 医療事故・医療裁判