弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

熊本大学医学部附属病院,乳児の足の甲に刺した点滴から電解質液が漏出し親指が壊死した事故発表

読売新聞「生体肝移植中に医療ミス、乳児の足指が壊死」(2012年6月20日)は,次のとおり報じています.

「熊本大付属病院(熊本市)は20日、熊本県内の男の乳児に対して今年2月に行った生体肝移植手術の際、点滴液が血管から体内に漏れ出し、親指の先が壊死する事故があったと発表した。

 猪股裕紀洋病院長は「非常に申し訳ない。補償を含めて誠意を持って対応していきたい」と話している。

 病院長によると、点滴はカルシウムや水分補給などが目的で、右足の甲から行った。10時間を超す手術終了後、スタッフが右足の親指が腫れているのに気づいた。症状は悪化し、約2か月後に第1関節から先が欠落。点滴の薬液に含まれていた塩化カルシウムが、親指の壊死の原因になった可能性があるとみている。

 男児は術後の観察のため入院している。」


乳児の血管は弾力に乏しく圧迫に弱いうえ,本件は足の甲から点滴を行っていますので,漏出のリスクが高かった症例です.カルシウムなどの電解質液は,細胞膜の働きを阻害して皮膚障害をきたすので,漏出に要注意です.
当然事前に血管内に適切に挿入されたか確認しているはずですが,術中も,漏出の危険性を意識して観察し,早めに漏出に気づいてほしかった事案です.

谷直樹

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by medical-law | 2012-06-21 02:05 | 医療事故・医療裁判