弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

NHKアンケート調査,がん患者約7割が,治療の経済的負担大きい,と回答

抗がん剤が高額なことは,よく知られています.
また,がん自体では身体障害に認定されません(ただし,長期在宅酸素療法や人工肛門などは,近い将来において生命の維持が困難となる場合を除き障害認定可能です.)
がん患者は,がんだけではなく,経済的負担にも脅かされているのが現状です.

NHKが2012年5月,がん患者とその家族に郵送とインターネットで行ったアンケート(2512人が回答)の結果が,次のとおり報じられています.

「治療のための経済的負担について「かなり大きい」と答えた人は40.3%と最も多く、「やや大きい」と合わせると全体の70%が治療費の負担の大きさを感じていることが分かりました。
また、全体の4.4%は、治療費が高いために望む治療が受けられなかったと答えていて、このうち3人に1人は治療を変更していたほか、6人に1人は治療を中止していました。」

「東北大学の濃沼信夫教授は「不況で収入が減る一方、多額の開発費用をかけた抗がん剤の製品化が続き、患者の経済的負担の増大につながっている。経済格差がそのまま受けられる医療の格差につながらないよう、がんなどの重い病気は自己負担の割合や額を優先的に低くするなど、医療費の配分の在り方を本格的に検討すべきだ」と話しています。」

「アンケートの自由記述欄には、治療の経済的負担の大きさを訴えるがん患者のさまざまな声がつづられていました。
このうち、肝臓がんの30代の女性は「治療費などの負担を少しでも軽くしてほしい。子どもの教育費を優先したいが、自分の治療費に消えていき本当につらい」と記しています。
また、卵巣がんの50代の女性は「病気になり退職。退職金や預貯金を切り崩して5年。年金生活にはまだ10年以上。経済的負担から精神的にも追い詰められている」と将来への不安を訴えています。
一方、治療費を捻出するため、病気になっても休職できないと訴える声も多く、悪性リンパ腫の治療を続けている40代の男性の妻は「常に毎日、お金の心配ばかりしている。小さい子どももいるため、主人は無理してでも仕事をしてくれている。もっと国からの助けがあればよいが何もない」と記していました。」


NHK「がん患者7割“経済的負担大きい”」(2012年6月30日)参照

個々人が,がん保険などでがん治療の経済的負担に備えるというのでは,貧富の差が医療格差につながるでしょう.公的なシステムのなかで,平等に必要な医療が受けられるようにすべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-07-01 01:07 | 医療