『治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書』
「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書」は,「「治療と職業生活の両立」とは、病気を抱えながらも、働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら、生き生きと就労を続けられることである。」」としています.
報告書「3 支援のあり方」は,次のとおり,指摘します.
「3 支援の在り方
(1)関係者が取るべき対応、連携の在り方
○ 上記の基盤整備のために、関係者が連携を図りながら、以下のような取組を進めていくことが必要である。
<企業(人事労務担当者)>
まずは、健康診断の実施、産業医の選任をはじめとする労働安全衛生法上の措置を徹底することにより、労働者の疾病の早期発見・早期治療や重症化防止に努めること。また、職場における疾病に対する理解を高め、治療と職業生活の両立に理解のある職場風土を形成するために、産業医・産業保健スタッフ、地域産業保健センターや地域の保健機関等を活用しながら、労働者及び管理監督者の教育に努めること。
早期の職場復帰及び復帰後の治療と職業生活の両立を促進するため、時間単位の有給休暇制度や短時間勤務制度等を導入すると同時に、個々の事案に応じた対応ができるよう、柔軟な雇用管理の取組を進めること。
<産業医・産業保健スタッフ>
労働者の健康確保のため、人事労務担当者と協力し、治療開始の促しや治療中断に対するアプローチなど確実な定期健康診断後のフォローアップを行うこと。
また、労働者の職場復帰や復帰後の治療と職業生活との両立に関しても、専門的知識の蓄積を図るとともに、有する知識、ノウハウ等を活かし、積極的に医療機関と連携を図りながら、人事労務担当者の役割を補助すること。
特に、保健師は、産業医以上に労働者への身近な相談相手としての立場を活かし、積極的に労働者本人と接触し、産業医や人事労務担当者、医療機関との連携を図ること。
治療と職業生活の両立に関する相談に十分に対応できる機関がないことから、地域の保健機関と並んで、労働者及び管理監督者にとって身近な相談窓口としての役割を一層果たすこと。
<医療機関>
医療資源が限られている中でさまざまな困難はあるものの、保健師や看護師等の就労に関する制度等の知識の向上や、ピアサポートグループの活用を図ること等により、職場復帰や復帰後の治療と職業生活との両立に関する相談体制を整備するよう努めること。
患者の就業状況を把握した上で、治療方針の決定に際し、可能な範囲で仕事を休まずに治療を受けられるよう配慮すること。
企業の行う職場復帰の判断に役立つよう、主治医は、患者の就業状況を考慮した上で、職場復帰が可能な程度まで回復しているかどうかに関する診断を行うこと。
<労働者>
健康診断の受診の機会等を通じて、日頃から、疾病の予防、早期発見及び重症化防止に努めること。
労働者自らが積極的な情報収集を行い、また、労働者の職場復帰や復職後の治療と職業生活の両立を促進するための企業と医療機関の情報共有・連携に協力すること。
(2)行政の役割
○ 関係者の取組を促進するため、行政の役割として、どのようなことが考えられるか。
まずは、「治療と職業生活の両立」について、社会的な認識を向上させる必要がある。
また、問題の大きさを正確に把握するため、支援を要する労働者の規模や具体的なニーズ、関係者の取組状況(企業や医療機関内の相談対応窓口の整備、教育研修・情報提供の有無等)等について、実態把握を行う必要がある。
○ さらに、各関係者に対しては、今後、以下のような取組を行うことが望まれる。
<企業(人事労務担当者)向け>
治療と職業生活の両立を支援するために、企業がどう取り組むべきかを示したガイドラインやマニュアル等を作成し、周知・徹底を図ること。
個別事案も含めた、企業の人事担当者等からの相談に対する支援体制を整備すること。また、相談支援体制の整備とあわせて、企業の人事担当者等が相談できる機関が分かるよう周知を図ること
先行的に取組を進めている企業について、事例の収集・発信や表彰制度を設けるなど、企業の自発的な取組の促進を図ること。
<産業医・産業保健スタッフ向け>
メンタルヘルスに関する復職支援の手引きを参考に、疾病全般を対象とした両立支援のためのガイドラインを作成すること等により、両立支援に取り組む産業保健スタッフを支援すること。
産業保健推進センターを活用して、治療と職業生活の両立の支援に関する研修を実施し、両立支援に理解のある産業医・産業保健スタッフを育成すること。
<医療機関向け>
治療と職業生活の両立を支援するために、医療機関がどう取り組むべきかを示したガイドラインやマニュアル等を作成し、周知・徹底を図ること。
がん診療連携拠点病院・肝疾患診療連携拠点病院の相談支援センター等の相談窓口について、患者からの就労に関する相談に対する支援体制を強化すること。
医療機関が企業の産業医・産業保健スタッフに対して、両立支援を目的とした患者情報の提供を行うことにインセンティブが働くよう検討すること。
労災病院においては、引き続き、治療と職業生活の両立を図るモデル医療や、就労形態や職場環境が疾病の発症や治療、予防に及ぼす影響等に関する研究・開発、普及に取り組むこと。
<労働者向け>
相談支援体制の整備とあわせて、労働者が相談できる機関が分かるよう周知を図ること。
さらに、こうした取組とあわせて、患者の立場に立って、企業と医療機関を結びつける仕組みや、地方自治体が行う地域保健と企業の行う職域保健の連携強化についても検討することが望ましい。
(3)留意すべき事項
○ 上記のような取組・連携を進めていくにあたっては、関係者が問題意識を共有し、一体となって進めていくことが望ましいが、個々の企業、医療機関や労働者の雇用形態の違いにも留意する必要がある。例えば、中小企業の場合、大企業と比較すると、長期にわたって休職中の労働者を支援することに対する経済的負担が大きいことや、人事労務担当者や産業医・産業保健スタッフの体制も十分でないことが挙げられる。
医療機関についても、個々の医療機関間の違いは大きく、一律な取組を求めることは現実的ではない場合がある。
取組が遅れがちな非正規雇用者については、雇用管理の改善のための取組を進める中で、両立支援についても配慮することが重要である。
○ また、関係者が情報共有・連携を進めるにあたっては、個人のプライバシー保護に留意する必要がある。
○ さらに、病気を理由として職を失った労働者に対する再就職支援の問題についても、今後、取組を進める必要がある。」
「4 おわりに」で,「○ 「治療と職業生活の両立等の支援」は、行政として、既存の仕組み・施策を活用しながら、今後対策を重視しなければいけない課題であるが、この課題の解決には、縦割り行政を排除し、一元的な取組を進める必要がある。
本検討会が、この問題と支援の必要性について、広く国民一般が認識する契機となり、今後、行政の一元的な取組のもと、関係者の取組がより一層進むことを期待する。」と結んでいます.
報告書(PDF:327KB)
報告書概要(PDF:121KB)
参考資料集(PDF:732KB)
この厚生労働省の検討会報告書に基づき,治療と職業生活の両立が実際の政策として実現されることを期待いたします.
谷直樹
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