ベルト固定怠りストレッチャーから転落,手術部位確認怠り対側開頭,医師ら罰金(報道)
「○県○町の○○病院で2007年、手術部位を誤るなどして入院中の男性患者(当時88歳)にけがを負わせたとして、屋久島区検が男性院長(54)と男性看護助手2人(41歳と27歳)を業務上過失傷害罪で○簡裁に略式起訴していたことが分かった。
7月13日付。簡裁は同26日付で、院長に罰金20万円、看護助手2人に罰金各10万円の略式命令を出し、3人は納付した。
起訴状などによると、看護助手2人は07年8月7日、入浴介助後に男性患者をストレッチャーで搬送する際、ベルトで固定せず床に転落させ、右頭部に急性硬膜下血腫のけがを負わせた。
院長は同日、この患者の血腫除去手術の際、手術部位を確認せずに異常のない左頭部を切開するなどし、約1週間のけがを負わせた。
○会○本部によると、患者は約2か月後に肺炎で死亡した。同本部は「患者さまには大変申し訳なく、このような事故のないよう再発防止対策を強化しています」とコメントした。」
患者は約2カ月後に肺炎で死亡しましたが,死亡までの責任は問わず,業務上過失傷害で略式起訴となった事案です.
入浴介助後に患者をストレッチャーで搬送する際ベルトで固定しないのは,看護助手としての「業務上必要な注意を怠り」にあたり,その結果,患者を床に転落させ急性硬膜下血腫の傷害を負わせたのですから,業務上過失傷害罪(刑法211条1項1文)にあたります.
業務上過失傷害罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と定められています.
院長が手術部位を確認せずに異常のない左頭部を切開したのは,医師としての「業務上必要な注意を怠り」にあたり,その結果,患者に約1週間のけがを負わせたのですから,業務上過失傷害罪(刑法211条1項1文)にあたります.
看護助手が10万円の罰金で,医師が罰金20万円というのは,上記報道のとおりとすると適切な量刑でしょう.
なお,医師に刑事免責を与えるべき,との主張を聞きますが,手術部位を確認せずに異常のない左頭部を切開した医師を免責することが,医療のために本当に必要なのでしょうか.上記事案で,看護助手が罰金を支払い,医師が罰金を免れる,という扱いが公平なのでしょうか.刑事免責論には疑問を禁じ得ません.
谷直樹
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