弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京医大茨城医療センター,保険医療機関指定取消し

MSN産経「保険指定取り消しへ 診療報酬不正請求で東京医大茨城医療センター」(2012年9月21日) は,次のとおり,報じました.
 
「診療報酬約8284万円を不正に請求したとして、厚生労働省関東信越厚生局は21日、東京医大茨城医療センター(茨城県阿見町)の保険医療機関の指定を12月1日付で取り消すと発表した。厚労省によると、少なくとも平成10年度以降で大学病院が保険医療機関の指定を取り消されたことはなく、今回は極めて異例。」

「厚生局によると、診療報酬の不適切な請求は平成21年7月に病院側が公表して発覚。厚生局の監査の結果、20年4月から21年5月にかけ、退院した患者の数を水増しして診療報酬の加算分を請求するなど、3万242件、約8284万円の不正請求が判明した。

 厚生局は「入院患者の転院や地域医療を考慮して(取り消しを)12月1日とした」と説明。指定取り消しの期間は原則として5年間だが、地域への影響を考慮して期間が短縮されることもあるという。」


読売新聞「東京医大茨城医療センター、保険指定取り消し」(2012年9月22日)によると,「2008年4月~09年5月、必要な基準を満たさずに入院や手術に伴う診療報酬の加算分を算定したり、実際に働いていない事務作業員を配置しているように偽ったりして、診療報酬を不正に請求した。」とのことです.


健康保険法第80条は,次のとおり保険医療機関又は保険薬局の指定取り消しを定めています.

「厚生労働大臣は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該保険医療機関又は保険薬局に係る第六十三条第三項第一号の指定を取り消すことができる。

一  保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師が、第七十二条第一項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき(当該違反を防止するため、当該保険医療機関又は保険薬局が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く。)。
二  前号のほか、保険医療機関又は保険薬局が、第七十条第一項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
三  療養の給付に関する費用の請求又は第八十五条第五項(第八十五条の二第五項及び第八十六条第四項において準用する場合を含む。)若しくは第百十条第四項(これらの規定を第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定による支払に関する請求について不正があったとき。
四  保険医療機関又は保険薬局が、第七十八条第一項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。次号において同じ。)の規定により報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。
五  保険医療機関又は保険薬局の開設者又は従業者が、第七十八条第一項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき(当該保険医療機関又は保険薬局の従業者がその行為をした場合において、その行為を防止するため、当該保険医療機関又は保険薬局が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く。)。
六  この法律以外の医療保険各法 による療養の給付若しくは被保険者若しくは被扶養者の療養又は高齢者の医療の確保に関する法律 による療養の給付、入院時食事療養費に係る療養、入院時生活療養費に係る療養若しくは保険外併用療養費に係る療養に関し、前各号のいずれかに相当する事由があったとき。
七  保険医療機関又は保険薬局の開設者又は管理者が、この法律その他国民の保健医療に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者に該当するに至ったとき。
八  保険医療機関又は保険薬局の開設者又は管理者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者に該当するに至ったとき。
九  前各号に掲げる場合のほか、保険医療機関又は保険薬局の開設者が、この法律その他国民の保健医療に関する法律で政令で定めるもの又はこれらの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。 」

これからすると,3万242件約8284万円の不正請求を故意に行った東京医大茨城医療センターの保険医療機関指定取り消しは,当然です.
東京医大茨城医療センターが,保険医療機関取り消しで,患者が来なくなり,苦境に陥りるのは自業自得ですが,なにより一番困るのは地域の患者です.

本件に限ったことではなく,保険医療機関指定取り消しで患者が行き場を失い困った事態になるのは,大きな医療機関の保険医療機関指定取り消しでは,起きています.
このような事態が生じないよう監督を強化するのは勿論ですが,例えば懲罰的な課金などにより代替し,保険医療機関指定取り消しを回避できるよう法改正を検討してもよいように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-09-23 03:10 | 医療