弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日本医療機能評価機構,医療事故情報収集等事業第30回報告書

公益財団法人日本医療機能評価機構は,平成24 年9月26日,「医療事故情報収集等事業第30回報告書( 平成24年4月~6月)」を公表しました.或る医療機関で起きたことは,他の医療機関でも起きる可能性があります,医療事故を収集し分析することは,医療事故防止に有用です.
事故防止のため,ご一読をお奨めいたします.

個別のテーマの検討状況として,次の5点を取り上げています.
【1】MRI検査に関連した医療事故
【2】自己管理薬に関連した医療事故
【3】患者持参薬が院内不採用であることに気付かず、薬剤の頭3文字検索で表示された他の薬剤を処方した事例
【4】組み立て方を誤った手動式肺人工蘇生器を使用した事例
【5】東日本大震災による影響を一因とした事例


【1】MRI検査に関連した医療事故

チェックの仕組みがあるにもかかわらず,それが機能しなかった理由について,知識不足やルールの逸脱の他に,酸素ボンベの装着位置がよく見えなかったという認識のエラーや,アラームが鳴っているのを「いつものこと」と思って確認しなかったという判断のエラーなどの理由もあった,とのことです.
さらに,医療機関から報告された改善策が整理して示されています.

【2】自己管理薬に関連した医療事故

「その他(経路、内服方法)」の事例は全てPTPシートの誤飲で,「注射薬」の事例の多くはインスリン製剤を自己管理していた事例とのことです.自己管理薬に関連した医療事故」は,医療事故に比べてヒヤリ・ハット事例が大変多い,と指摘しています

【3】患者持参薬が院内不採用であることに気付かず、薬剤の頭3文字検索で表示された他の薬剤を処方した事例

薬剤の頭3文字検索は便利ですが,名称が類似した薬剤を誤って選択する可能性があり留意が必要です.
「ノルバスク」を処方するために「ノルバ」と入力したところ,唯一表示された「ノルバデックス」を選択し処方した事例を取り上げています.
その医療機関ではノルバスクを採用していなかったことを医師は知らなかったことが新たなリスクとなったと分析しています.医療機関が行った改善策の中で,院内で周知するために作成したニューズレターも掲載しています.

【4】組み立て方を誤った手動式肺人工蘇生器を使用した事例

組み立て方を誤って死亡した例2例が報告されていますが,このような事故を防止するには,組み立てた後の点検が重要と指摘しています.報告された改善策が紹介されています.

【5】東日本大震災による影響を一因とした事例

地震発生時と地震発生後に分け,具体的な内容を整理した表が掲載されています.
地震の最中に患者が転倒した事例や,地震後の計画停電や混乱の中で熱傷や画像診断報告書の確認忘れ,薬剤の重複投与,不穏状態の発生などの事例が報告されています.医療機関からの改善策も整理して示されています.

谷直樹

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by medical-law | 2012-09-27 08:18 | 医療事故・医療裁判