市立奈良病院,インターフェロン療法の副作用による自殺事案,1500万円で和解(報道)
「奈良市の市立奈良病院で、インターフェロン療法によるC型肝炎の治療を受けたあと自殺した市内の男性会社員(当時27歳)の両親が、「うつ症状の副作用に関する説明を怠った」などとして、病院を運営する地域医療振興協会(東京)と主治医に6900万円の損害賠償を求めた訴訟が、地裁(一谷好文裁判長)で和解していたことがわかった。
和解は昨年12月14日付。協会が両親に1500万円を支払い、協会と主治医が同療法で、こうした副作用に注意して治療に努めることなどが条件。」
医療過誤に基づく損害賠償は,①注意義務違反(過失),②因果関係,③損害の3要件がそろってはじめて認められます.
医師は,インターフェロン療法の副作用(抑うつ症状等)について説明する義務がありますし,副作用に注意して治療に努める義務があります.本件は,おそらく,注意義務違反については認められる事案だったのでしょう.
注意義務違反が認定できても,さらに,医師が副作用(抑うつ症状等)について説明していれば,患者はインターフェロン療法義務を選択しなかった,医師が副作用に注意して治療に努めていたら,自殺の徴候を発見できインターフェロン療法を中止し自殺を防止できた,という因果関係の認定が必要です.
そして,最後に,注意義務違反と相当因果関係のある損害を認定する必要があります.
請求認容判決には,①注意義務違反(過失),②因果関係,③損害の3要件について厳密な証明が必要です.
これに対し,裁判上の和解は,厳密な証明を要せず,或る程度の心証に基づき中間的解決が可能です.
本件において,協会が両親に1500万円を支払い,協会と主治医が今後インターフェロンのこうした副作用に注意して治療に努める,という和解は,裁判所の心証に基づき成立したものと思います.
谷直樹
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