弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

信州大医学部附属病院,止血用のアドレナリン注射薬を局所麻酔薬のリドカインと間違えて注射(報道)

読売新聞「麻酔と誤って止血剤注射…信大付属病院」(2012年10月11日)は,次のとおり報じています.

「信州大医学部付属病院(松本市)は10日、80歳代の男性患者に皮膚の移植手術をする際、局所麻酔で別の止血用薬剤を誤って注射する医療事故があったと発表した。患者は手術中に心拍数や血圧が上昇し、一時意識不明となったが、集中治療室で治療を受け、回復に向かっているという。

 同病院によると、患者は動脈が詰まり、足がただれる重症下肢虚血で今月3日、左足に脇腹の皮膚を移植する手術を受けた。手術前、担当医師が局所麻酔用の薬剤リドカインEを注射するはずが、看護師は生理食塩水で希釈した止血用のアドレナリン注射薬が入った注射器3本(計30ミリ・リットル分)を渡し、医師がそのまま注射した。

 看護師はアドレナリン注射薬を希釈中に医師から「局麻(局所麻酔薬)下さい」と言われ、手元の注射薬を求められたと思って手渡した。お互いに声に出して薬剤名は確認しなかった。別の看護師がアドレナリン注射薬の量が少ないことに気付き、ミスが分かった。

 男性患者は手術後半に心拍数や血圧が上がり、終了後に検査した結果、ストレスなどで心臓の筋肉が動かなくなるたこつぼ型心筋症と診断された。止血剤を注射したことが原因とみられるという。患者は快方に向かっているが、現在も集中治療室で治療を受けている。

 記者会見した天野直二病院長は「二度と繰り返さないよう、速やかな再発防止策を講じたい」と陳謝した。」


中日新聞「手術時に誤注射、患者一時意識不明 信州大病院」(2012年10月11日) は,次のとおり報じています.

「長野県松本市の信州大付属病院は10日、手術中に麻酔薬と間違え、血圧を上げるアドレナリンの希釈液を患者に誤って注射する医療ミスが起きたと発表した。患者は血圧上昇によるストレスで手術中に心筋症を発症し、血圧の急激な上下動から一時意識不明となったが、現在は回復傾向にある。

患者は80代の男性で、足の動脈が硬化して血液が行き渡らなくなる重症下肢虚血を患い入院。3日に脇腹の皮膚を足に移植する手術を受けた。

 手術中、医師が局所麻酔のリドカインを注射しようと注射器を求めた際、看護師が止血用に準備していたアドレナリン希釈液入りの注射器を誤って渡した。すぐ別の看護師が誤注射に気づいたが、この時点では患者の容体に問題がなく、15分程度で終わる予定だったため、あらためて局所麻酔を注射して手術を続行したところ、患者が一時意識不明になるなどした。

 病院側は既に患者と家族に謝罪した。記者会見した天野直二病院長は「注射の受け渡し時に薬剤の確認が徹底されていなかったことが事故の原因。2度と起こらないよう再発防止策を講じたい」と陳謝した。(佐野公彦)」


毎日新聞「医療事故:信大病院が誤注射 80代男性、一時意識不明 快方へ /長野」(2012年10月11日)は,次のとおり報じています.

「松本市の信州大医学部付属病院は10日、皮膚の移植手術で80代の男性患者に局所麻酔薬を注射する際、誤って止血用のアドレナリンを注射したと発表した。注射薬を誤った影響で患者は心臓の動きが悪化する「たこつぼ型心筋症」を発症し一時、意識不明になったが、間もなく回復し、現在は快方に向かっているという。

 病院によると、患者は足の血行が悪くなる「重症下肢虚血」を発症。今月3日、皮膚がただれた左足のアキレスけん周辺に、脇腹の皮膚を移植する外科手術を受けた。執刀前、脇腹に麻酔をかけるため、0・5%に希釈した麻酔薬「リドカインE」計30ミリリットルを注射するはずが、看護師が誤って、止血用に用意した0・01%のアドレナリン希釈液入り注射器を医師に渡した。医師は患者に各10ミリリットルを計3回皮下注射した。

 アドレナリン希釈液の残量が少ないため、別の看護師がミスに気が付いた。その時点で容体に問題はなく、約15分間の短時間の手術だったため、予定通り皮膚を移植した。終了間際、血圧の上昇や心電図に異常が出て容体が悪化。現在も患者は集中治療室で処置しているが、意識は回復し、今週末に一般病棟に移る見込み。病院は3日中に本人と家族に謝罪したという。

 記者会見で天野直二院長は「二度と繰り返さないよう再発防止に努めたい」と陳謝した。【大島英吾】」


「看護師はアドレナリン注射薬を希釈中に医師から「局麻(局所麻酔薬)下さい」と言われ、手元の注射薬を求められたと思って手渡した。お互いに声に出して薬剤名は確認しなかった。」ということが,どうしておきるのでしょうか.看護師も軽率ですが,医師も不注意です.

かつて,医師がオーロバンソーダの静脈注射を指示し,指示を受けた看護師がクロロフォルムを静脈注射した事案で,広島高裁は「(医師は)注射液の指示を受けた看護婦及びその補助者を監督監視し,自己に於いて現実に注射を行う場合と同様の注意をもって,患者の体内に注射する直接の行為はもちろんのこと,その以前における準備行為とも言うべき自己の指示した注射液の正確な確認,性状,薬液の混濁,浮遊物の有無,あるいは分量等,いやしくも注射に関することについては,細大もらさず厳重な検査をなし,もって注射の過誤なきを期すべき業務上の注意義務がある」と判示しました(広島高等裁判所昭和33年3月6日判決高刑特4・696).

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-11 20:35 | 医療事故・医療裁判