弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

重度障害児の専門医療施設で7歳の男児が高熱を出し胃からの出血で窒息死した事案,道と両親が和解(報道)

NHK「施設で男児死亡 道と両親和解」(2012年10月29日)は,次のとおり報じました.

「障害のある子どもを道の医療施設に預けた両親が「子どもが高熱を出して死亡したのは適切な対応を取らなかったためだ」として道に賠償を求めた裁判は、道が両親に和解金を支払うことなどで和解が成立しました。
この裁判は平成16年に、札幌市手稲区にあった道立の「札幌肢体不自由児総合療育センター」、現在の「子ども総合医療・療育センター」で大量の血を吐いて窒息死した7歳の男の子の両親が「高熱が続いていたのに解熱などの適切な対応を取らなかった」などとして道に7000万円余りの賠償を求めたものです。
札幌地方裁判所で続いていた裁判で、道は「過失はなかった」と主張し争っていましたが、今月に入って裁判所から和解を提案され、29日、道が両親に和解金を支払うことなどで和解が成立しました。詳しい和解の内容は明らかになっていませんが、道の担当者は「日ごろから安全管理を徹底しているが、今後も引き続き医療事故の防止に努めたい」と話しています。」


北海道新聞「男児死亡訴訟 遺族と道和解 札幌地裁」(2012年10月29日)は,次のとおり報じました.

「道の小児専門医療施設に預けた男児=当時(7)=が死亡したのは医療過誤が原因として、札幌市の両親が道に約7200万円の損害賠償を求めた訴訟は29日、札幌地裁で道が両親に和解金を支払うことで和解が成立した。双方は金額を明らかにしていない。

訴状によると、重いてんかんなどの障害があった男児は2004年12月、短期入所先の札幌市手稲区の道立札幌肢体不自由児総合療育センター(現道立子ども総合医療・療育センター)で高熱を出し、胃からの出血が原因で窒息死したという。両親側はセンターが重度障害児の専門機関としての義務に反し、経過観察や解熱などの措置を怠ったと主張。道側は過失の有無をめぐり争っていた。

 和解を受け、原告側の弁護士は「センターは今回の事故を踏まえ、障害児のためにより良い医療・支援に努めてほしい」と話した。道は「今後も引き続き医療事故の未然防止に努めたい」とのコメントを出した。」


2004年12月の事故について裁判上の和解に至るまでこれだけの年月がかかっています.
医療過誤に基づく損害賠償請求は大変です.
ちなみに,札幌には「札幌医療事故問題研究会」という患者側の弁護士の団体があります.

谷直樹

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by medical-law | 2012-10-30 02:17 | 医療事故・医療裁判