弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

第15 回「産科医療補償制度運営委員会」-第6 回制度見直しの検討-

CBニュース 「産科補償、小児専門施設の対象追加が論点に- 運営委では慎重論相次ぐ」 (2010年11月1日)は,次のとおり報じています.

 「産科医療補償制度」の見直しを検討している日本医療機能評価機構の運営委員会が1日に開かれ、産科がない小児専門医療機関を同制度の対象に追加することを同機構が論点に挙げた。こうした施設のNICU(新生児集中治療室)に救急搬送された後の経過について詳細な医学的分析をできるようにすることが狙いだが、委員からは、NICUでの医療に問題があるケースが少ないことや、マンパワーの問題から、慎重な検討を求める声が相次いだ。

この制度は、分娩に関連して発症した重度脳性まひ児に一定の条件下で補償することと、症例の原因分析を通じて重度脳性まひの再発を防止することが目的。
 同機構によると、これまでに補償対象になり、原因分析が行われた症例のうち約70%で、新生児仮死などによりNICUがあるほかの医療機関に救急搬送されていた。受け入れ先の医療機関は、ほとんどが周産期母子医療センターなど、この制度に加入する施設だが、産科がない小児専門医療機関に搬送されるケースもある。現状では、こうした施設の小児科医や新生児科医らにも情報提供を求めているものの、過度な負担を掛けないよう医学的評価の対象にはしておらず、妊娠中や分娩時に比べて新生児期の経過について詳細に分析することは難しい。

 この日の運営委で同機構は、「NICUにおける診療行為などについても医学的評価を行うことで、産科医療のみならず、周産期医療全体の質を高めることにつながると考えられる」として、小児専門医療機関も制度の対象に含めることを論点に挙げた。
 しかし、原因分析委員長の岡井崇委員(日本産科婦人科学会副理事長)は、「NICUでの医療に何か問題があった例はほとんどない」と指摘。さらに、「NICUでの医療をチェックしようとすると、新生児関連の委員を3倍くらいに増やさないといけない」と述べ、慎重な検討を求めた。ほかの委員からも、「NICUがあるような規模の大きい医療機関には自浄作用があるので、必要ないのではないか」などの慎重論が相次ぎ、NICU搬送後の医療行為に問題があるケースがどれほどあるか実態を把握した上で、改めて検討することになった。

■裁判を受ける権利「制限難しい」で一致

 運営委ではまた、同制度で補償金を受け取った保護者の「裁判を受ける権利」(訴権)を制限することの是非について協議し、「難しい」との認識で一致した。

 これまでの運営委で、「訴権が制限されていないと、医療者と保護者の紛争防止にならない」との意見が出たことを踏まえて検討されたが、機構側は訴権の制限が難しい理由として、▽憲法に違反する▽この制度の補償額である3000万円を超える損害賠償額となる事例も考えられ、保護者の利益を損なう恐れがある▽この制度への補償申請が減れば、制度の目的である「紛争の防止・早期解決」の効果が薄れたり、脳性まひの実態把握ができなくなったりする―を挙げた。委員からも訴権の制限を求める意見は出なかった。【高崎慎也】」


産科医療保障において,NICUの診療行為を医学的に評価する必要性は低いと思いますが,小児科医側から産科の医療行為を評価する必要はあるでしょうから,委員に小児科医をふやしたほうがよいと思います.

資料はこちら

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-11-01 22:18 | 医療事故・医療裁判