弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

WHO元事務局長中嶋宏さん御逝去

WHO元事務局長中嶋宏さんが,2013年1月26日,84歳で御逝去されました.心から御冥福をお祈りし,謹んでお悔やみを申し上げます.
中嶋宏さんには,以前来日した際に個人的にお会いし,WHOのタバコ対策についておうかがいしたことがあります.

1997年のWHO事務局長のメッセージを,あらためてご紹介いたします.

"United for tobacco-free world" ~手をつなごう! タバコのない世界を目指して~

 タバコが健康に様々な悪い影響を与えることが明らかにされてから40年以上がたちました。その科学的証拠はまたたく間に積み上げられ、タバコが膨大な死亡と障害をもたらすことは、もはや疑う余地がありません。タバコ製品は20世紀の半ばからこれまでに先進国だけでも6000万人以上の人命を奪いました。この先30 年間、タバコ消費が大きく減らなければ、毎年世界中で1000万人がタバコによって殺され、その7割は発展途上国が占めることになります。このような人災による膨大な死亡は、全世界の保健上の緊急事態となっています。この病災の流行をくいとめるには、効果のある保健対策をすみやかに実行しなくてはなりません。

 しかし、タバコの流行をくい止めることは、病気の流行をくい止めるようにはいきません。タバコには、健康を守るための対策を無効にするために莫大な金をつぎ込むロビイストや世論工作の専門家が味方についています。さらに、一般市民はタバコの害を実際より小さく見積もっており、この傾向は市民の健康を守り増進する責任を負う保健専門家の中にさえ見られます。このようなわけで、甘いままのタバコ規制が続き、タバコ規制をやろうと思えばできる立場にある人々の多くが効果のある対策を実行せずにきたのです。

 その一方で、幸いなことに、タバコ規制の分野で賞賛すべき成果を上げた自覚的な個人、団体、政府が世界中に増えてきました。このような努力によって、無数の人々や社会が早死にから救われ、よりよい生活の質を手に入れることができたのです。これらの実例により、社会全体の健康をよりよい方向に変えることが可能であることが証明されました。

 問題が深刻なら解決策もしっかり立てる必要があります。タバコはあらゆる個人と社会をむしばみなす。幾百万人がタバコにより早死にし、さらに幾百万人がタバコ関連疾患に苦しみます。タバコを吸う友人、肉親、同僚を持つ非喫煙車は彼らをタバコのために失う危機にさらされています。また環境タバコ煙を強制的に吸わされて、深いな目にあい、健康を損ねるだけでなく命までも奪われる非喫煙者がいます。政府はタバコ関連疾患の治療のために何十億ドルも失い、さらにタバコによる早死にで何十億ドルもの生産損失を被ります。

 この病災を一個人、一組織、一国の力だけでくい止めることはできません。総合的で持続的なタバコ対策を実行するには幅広い世論の支持が必要です。社会のあらゆる分野の力がWHOと結びつき、「タバコのない世界を目指して手をつなぐ」ならば、タバコという厄災をなくすことができるでしょう。

WHO事務局長 中嶋 宏



谷直樹

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by medical-law | 2013-01-30 21:42 | タバコ