道路交通法改正試案が患者・医師の信頼関係を損なうことになるおそれが...
その中でとくに注目したいのは,一定の病気等に該当する者を診断した医師による任意の届出制度です.
免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するための規定の整備」における「イ 一定の病気等に該当する者を診断した医師による任意の届出制度」の項目について,日弁連は,次のとおり,意見を述べています.
「改正試案では「一定の病気等に該当する者を診断した医師は,その者が免許を受けていることを知ったときは,公安委員会にその診断の結果を任意に届け出ることができる」こととしているが,この改正には,以下のとおり,重大な問題があると言わざるを得ない。
① 病気に罹患し,医師の治療を受けようとする者は,厳しい守秘義務を課された医師であるからこそ,自らの症状や既往症などを正直に告げ,その医師を信頼して治療に専念できるのである。
しかし,もしも,任意とはいえ,医師により,自らの病気が公安委員会へ通報される可能性があるとすれば,一定の病気に罹患した人が,心身の不調を自覚しながらも医師の診察を受けなかったり,診察を受けても自己の症状を正直に申告しないなどの行動につながる可能性が生じる。その結果,医師は十分な治療行為ができなくなるとともに,一定の病気等に罹患している人が医療から遠ざかり,これらの人がかえって潜在化してしまい,ひいては国民の健康を害する結果となる恐れがある。
② また,医師の職責上,患者との信頼関係は最も重要である。しかし,改正試案にあるような医師による任意の届出制度を定めたとすれば医師は任意」といっても事故が起きた場合に責任を追及される可能性を考慮せざるを得ず,事実上,医師としての守秘義務の放棄を迫られることになり,ひいては患者との信頼関係を構築できない事態が生じかねない。
よって,医師が,任意に患者の情報を通報できる制度を創設することは,一定の病気の影響により引き起こされる交通事故を未然に防止するという理念に沿うどころか,かえって逆行するおそれがあると言わざるを得ない。」
道路交通法改正試案は,患者と医師の信頼関係を損ない,患者が病院に行かず治療が行われなくなる,というマイナス面のほうが大きいと思います.
谷直樹
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