日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言
交通手段の発達などによる身体活動の低下に加えて,脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満そして糖尿病の増加に大きく関与しているのではないかと考えられている,とのことです.
「生活習慣病の食事療法を論じるに際しては、日本人の身体活動度の変化と、食生活の変容を総合的に考慮しなければならない。その上で、患者が家族をはじめとする社会生活の中で、食を楽しみながら食事療法を実践・継続していくことを勘案すると、現時点では日本人がこれまで培ってきた伝統的な食文化を基軸にして、かつ現在の食生活の変化にも柔軟に対応していくことが重要である。
また、日本人の糖尿病の病態が欧米化しつつある現在、日本人の病態と嗜好性に相応しい食事療法の継続的な検討が必要である。食事療法は実行され、継続できなければ意味をなさない。」と現実的です.
「栄養素組成のみにとどまらず、食事療法の実践を促すマテリアルあるいはチームケアの在り方についても、さらに調査・研究を要する。
食事療法は、患者の病態・嗜好性に応じて、医師・管理栄養士などの医療従事者が患者と共に考え、それが有効かつ安全に実践されていることを常にモニターしていく必要があり、その中から、新しいエビデンスを構築していかなければならない。」とまとめています.
炭水化物ダイエットについては,「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。」としています.
基本的には,「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物50~60%エネルギー(150g/日以上)、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。」とのことです.
個別の考慮もなされており,以下のとおりです.
「身体活動量が多い場合には、炭水化物の摂取比率を60%エネルギー以上に高めることも考慮されるが、食後高血糖や単純糖質の過剰摂取などには十分な注意が必要である。」
「腎障害や脂質異常症の有無に留意して、たんぱく質、脂質の摂取量を勘案し、大きな齟齬がなければ、患者の嗜好性や病態に応じて炭水化物の摂取比率が50%エネルギーを下回ることもありうる。」
つまり,患者の嗜好性も考慮の一つにはいったのです.
「脂質摂取比率の上限は可能な限り25%エネルギーとするが、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、トランス脂肪酸の摂取を抑えるなど、脂肪酸構成にも十分な配慮が必要であり、その場合の総脂質摂取量については検討を要する。」
「たんぱく質については、糖尿病患者の高齢化に伴い、潜在的な腎障害の合併例が増していることに留意し、CKDにあってはその指針に従う。」
「炭水化物摂取量の多寡によらず、食物繊維は20g/日以上の摂取を促す。」
「食塩制限は、高血圧合併例では6g/日未満とする。」
「これらの基準は2型糖尿病を対象としたものであって、1型糖尿病では病態に合わせて別個に検討を要する。」
谷直樹
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