成年被後見人の選挙権剥奪違憲無効判決に国が控訴の方針(報道)
「成年後見人が付くと選挙権を失うとした公職選挙法の規定を違憲で無効とした14日の東京地裁判決について、政府は25日、控訴する方針を固めた。判決が確定すれば選挙権を有する人が増えることに伴い選挙事務が混乱するとして、政府としてはいったん控訴し、検討するための時間的猶予を得た上で法改正を急ぐ考えだ。政府関係者が25日夜、明らかにした。
政府は控訴期限の28日までに控訴する方針だが、同時に法改正する意向を説明する調整にも入った。法改正が成立すれば、その時点で控訴を取り下げることを検討している。
この問題をめぐっては、与党内でも公明党の井上義久幹事長が22日の記者会見で「選挙権という重要な問題に関わるので、法改正も含めて対応すべきだ」と提起。自民党の石破茂幹事長も「法改正すべきだ」と主張していた。」
国は素直に法改正を急ぎ,控訴すべきではないでしょう.
「判決が確定すれば選挙権を有する人が増えることに伴い選挙事務が混乱する」とのことですが,判決は原告・被告間について個別的効力を有するだけですので混乱は生じません.
控訴してもその控訴を取り下げると1審判決が確定します.
混乱をさけるためには法改正を急ぐことが肝要です.
なお,第二東京弁護士会は,2013年3月26日,成年被後見人の選挙権剥奪違憲無効判決についての会長声明を発表し,「国は、本件判決に対して控訴することなく、一日も早く成年被後見人の選挙権を回復するためにも、速やかに法改正に向けた取組を行うべき」と表明しました.
「平成25年3月14日、東京地方裁判所は、成年被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法11条1項1号を違憲無効とし、成年被後見人の選挙権を認める判決を言い渡した。
当該判決は、選挙権について、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書で保障されるとした上、国民から選挙権を奪うのは、それをすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難であると認められる「やむを得ない事由」があるという極めて例外的な場合に限られると判断した。その上で、成年被後見人とされた者が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけではないことは明らかであることから、成年被後見人から一律に選挙権を奪うことは「やむを得ない」制限であるということはできず、憲法15条1項等に違反するものであり、無効であると判断したものである。
当該判決は、諸外国の例も踏まえ、選挙権が民主主義の根幹をなす最も重要な基本的人権であることや、成年後見制度の理念を正確に理解した妥当な判断であり、積極的に評価することができる。これまで、選挙権が制限されるゆえに成年後見制度を利用できなかった障害者も多く、制度利用を阻害する大きな要因の1つとなっていたものであり、成年後見制度の理念である判断能力の不十分な人のノーマライゼーションを実現するためにも、速やかに是正される必要がある。また、2006年に採択された国連障害者の権利に関する条約を我が国で批准するためにも、早急な法改正が望まれるところである。
当該判決において、成年被後見人の選挙権を一律かつ全面的に制限することの違憲性は明らかとなったのであるから、国は、本件判決に対して控訴することなく、一日も早く成年被後見人の選挙権を回復するためにも、速やかに法改正に向けた取組を行うべきである。」
谷直樹
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