弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

和歌山地裁平成25年4月16日判決,脳脊髄液減少症と:労災との因果関係(報道) 

毎日新聞「脳脊髄液減少症:労災との因果関係初認定 和歌山地裁」(2013年04月16日)は,次のとおり報じました.

「脳脊髄(せきずい)液減少症が労災事故によって発症したかを争点とした訴訟の判決で、和歌山地裁(高橋善久裁判長=橋本真一裁判長代読)は16日、2011年に国の研究班が作成した新診断基準などを基に、和歌山県内の元配管工の男性(42)について「髄液漏れの蓋然(がいぜん)性が高い」とした上で、事故との因果関係を認め、男性が求めていた障害補償年金の支給決定(障害等級2級)を国に命じた。患者団体によると、同症を巡る労災訴訟で、国に労災認定の見直しを命じるのは全国初。

 訴訟では、(1)男性の症状と同症の関係(2)同症と労災事故との因果関係−−などが主な争点だった。

 判決では、(1)について、国の研究班作成の新診断基準に沿って、脳内の画像検査などを基に髄液漏れを認定。「同症によって四肢まひを呈した例が確認されていない」との国側の主張には、「報告されていないことのみをもって、因果関係を否定するのは相当ではない」と判断した。(2)については「髄液漏れは外傷により生じ得る上に、労災事故の態様や症状の経過などに照らせば、労災による髄液漏れを認めることができる」と結論付けた。

 判決などによると、男性は02年9月7日、和歌山市内のマンション建設現場で作業中、落下してきたケーブルで首を負傷。頭痛や全身の痛みに悩まされ、徐々に手足が動かなくなり、06年に「労災事故による外傷性の脳脊髄液減少症に伴う四肢まひ」と診断された。一方、和歌山労働基準監督署は同年、「局部に頑固な神経症状を残す障害」(障害等級12級)として労災認定。同症とはしなかった上、四肢まひを認めず、障害補償一時金として月収の5カ月分を支給した。

 男性は09年3月、現状の障害補償給付決定の取り消しと障害等級格上げを求め、和歌山地裁へ提訴していた。【岡村崇】

 原告代理人の冨山信彦弁護士の話 原告の症状と労災事故の因果関係を認めた画期的な判決だ。

 和歌山労働局の本間健司・労災補償課長の話 厚生労働省や法務局など関係機関と協議の上、今後対応していきたい。

◇脳脊髄液減少症◇
脳と脊髄を覆っている硬膜内の隙間(すきま)にある脳脊髄液が何らかの原因で減少し、ひどい頭痛や吐き気などを引き起こす。事故やスポーツなどの他、原因不明で発症するケースもある。国は2007年に研究班を発足。11年に「髄液の漏れ」を画像で判断するなどの新しい診断基準を発表した。治療法には、患者自身の血液を患部付近に注射して脳脊髄液の漏れを止める「ブラッドパッチ」がある。」


この判決の影響は大きいでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2013-04-17 01:13 | 医療事故・医療裁判