弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院,約25%の高濃度の酢酸使用で患者死亡(報道)

時事通信「酢酸注入で女性死亡=腸に損傷、医療ミス―横浜市大病院」(2013年 4月30日)は,つぎのとおり報じました.

「横浜市立大付属病院(平原史樹院長)は30日、入院中の50代の女性患者の栄養チューブに誤って高濃度の酢酸を注入し、女性が壊死(えし)を伴う腸炎を起こして死亡したと発表した。同日、医療事故として神奈川県警金沢署に届けたという。
 病院の説明によると、女性は昨年8月から入院し、鼻から栄養チューブを腸に通していた。4月7日にチューブが詰まったため、看護師が詰まりを除去しようと圧力をかけて酢酸を注入したが、誤って高濃度の酢酸を使用し、チューブから出た酢酸が腸を損傷。女性は24日に心不全と腎不全で死亡した。今後、酢酸の使用は中止するという。
 同病院は「当院に責任があり、深くおわびする。原因究明と再発防止に努める」としている。」


NHK「横浜市立大附属病院で患者死亡 医療ミス」(2013年4月30日)は,次のとおり報じました.

「横浜市立大学附属病院で、入院患者の栄養チューブの詰まりをなくすため、マニュアルにはない液体を注入した結果、患者の容体が急変して死亡し、病院は医療ミスを認めて家族に謝罪しました。

これは横浜市立大学附属病院が30日、記者会見して明らかにしました。
会見によりますと今月7日、心不全などで入院した横浜市内の50代の女性患者が鼻から腸に通すチューブで栄養を取っていたところ、チューブが詰まり、看護師が医師の許可を得てお湯で薄めた酢酸液を注入したということです。
このあと患者は、腹痛を訴えるなど容体が急変し、集中治療室で治療を続けたものの、小腸の炎症を起こして今月24日に死亡したということです。
容体の急変について病院は、マニュアルにないお湯で薄めた酢酸液をチューブに注入したためではないかとみて、家族に謝罪するとともに、警察に届け出て詳しい死因を調べています。
今後は、外部の専門家を入れた事故調査委員会を立ち上げ、再発防止などに当たりたいとしています。
横浜市立大学附属病院の平原史樹病院長は、「今回の医療事故は当院に責任があり、患者様、そしてご家族に深くおわび申し上げます。今後は、チューブが詰まった際に酢酸液の使用を禁止するなど、再発防止策を検討したい」と話しています。」


読売新聞「横浜市大病院で女性死亡、高濃度酢酸液を誤注入」(2013年4月30日)は,次のとおり報じました.

「横浜市立大学付属病院(平原史樹病院長)は30日、入院していた同市内の50歳代の女性が、医療ミスで死亡したと発表した。

 栄養チューブの詰まりをとる際、誤って酢酸液を通常の約25倍の濃度で注入したことが原因で、同病院は金沢署に届け出た。

 病院によると、女性は昨年8月、心臓や腎臓の異常で入院、集中治療室で鼻から小腸までチューブを通して栄養を摂取していた。4月7日、40歳代の看護師がチューブの詰まりをとるため酢酸液を作った際、適切な濃度は約1%なのに約25%の液を作ったという。女性は注入直後に腹痛を訴え、同24日、小腸炎を発症して死亡した。

 看護師は酢酸の瓶に手書きされていた割合通りに希釈したといい、病院で詳しく調べている。25%濃度だと、健康な人でも小腸に炎症が起きるという。」


酢水による経管栄養カテーテルの清潔管理法は,酢酸が直接体内に注入されるため,危険を伴います.
高濃度酢酸は,死亡の危険があります.
2003年に舞鶴赤十字病院で酢酸の原液を注入した死亡事故が発生し,2011年に立正佼成会付属佼成病院で約23%の高濃度酢酸を内視鏡検査の際に使用した死亡事故が起きています.
本件は約25%の高濃度酢酸を使用した死亡事故です.
(ちなみに,キッチンの排水口に使う酢酸は1.5%の濃度です.)

事故調査により原因が究明されることを期待いたします.

【追記】

毎日新聞「横浜市大病院:死亡事故報告書 慣行で酢酸水注入、検討なし /神奈川」(2013年8月9日) は,次のとおりじました.


「横浜市立大付属病院(同市金沢区)で今年4月、栄養チューブの詰まりをなくそうとした際、誤って高濃度の酢酸水を注入したため50代女性患者が死亡した医療事故を巡り、同病院は8日、科学的根拠が明確でない酢酸水の使用行為について、確認や検討がなされないまま実施する慣行があったことが要因との報告書を発表した。

 この事故で、看護師は医師の許可を得て濃度25%の酢酸水を18ミリリットル注入した。女性は直後に腹痛を訴え、17日後に亡くなった。

 外部有識者も交えた委員会がまとめた報告書は、事故の原因として、看護師が食酢と酢酸の違いについて明確に認識していなかったこと、チューブが詰まった時の対応がマニュアルに規定されていなかったことなどを挙げた。

 再発防止に向け、他の明文化されていない慣行も含めて是正とマニュアル化を進め、組織や職種を超えてコミュニケーションを取る環境をつくるという。【山田麻未】]


「酢酸の取扱いに関する医療事故にかかる事故調査報告書について」(平成25年8月)ご参照

谷直樹

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by medical-law | 2013-04-30 21:59 | 医療事故・医療裁判