産科医療補償制度再発防止委員会,第3回 産科医療補償制度 再発防止に関する報告書
今回の「テーマに沿った分析」は,臍帯脱出,常位胎盤早期剥離,子宮収縮薬,新生児蘇生,分娩中の胎児心拍数聴取です.
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

にほんブログ村
「提言は、産科医療関係者の皆様にこれだけは行っていただきたいと考える内容です。産科医療関係者の皆様にとっては、日常の臨床現場で当然行っていると思われる内容もありますが、一方で実際に掲載した事例のようなことが起こっていることも事実です。提言を今一度、日々の診療等の確認にご活用ください。」とのことです.
臍帯脱出については,次の提言がなされています.
「(1)メトロイリンテルの使用にあたって
①子宮頸管の熟化の評価など分娩誘発・促進の適応や要約を適正に判断し、また胎児の健常性の評価や異常時の対応などについても考慮し、ガイドラインに沿って慎重に使用する。
②41mL以上のメトロイリンテルを使用する場合、特に臍帯脱出に注意する。
③臍帯下垂・脱出がないことを確認しても、妊産婦の移動により臍帯や胎児先進部の位置が変わることがあるため、移動後に再度確認する。また、メトロイリンテル脱出から時間が経過して臍帯脱出が起こることがあるため定期的に観察するなど、臍帯下垂・脱出には十分に注意する。
(2)人工破膜の実施にあたって
①人工破膜実施の直前に、胎児先進部が固定したことおよび臍帯下垂がないことを確認した後に実施する。
②人工破膜実施後には、内診や腟鏡診などにより臍帯脱出の有無について速やかに確認する。
③胎児先進部が一度固定されたとしても、妊産婦の移動などにより胎児先進部の位置が変わることがあるため、移動後に臍帯下垂・脱出がないことを再度確認する。
(3)分娩機関内で発症した臍帯脱出への対応について
①臍帯脱出が認められた際には、骨盤高位を保持し、内診指により胎児先進部を挙上させたまま、緊急帝王切開術に移行する。経腟急速遂娩は、子宮口が全開大で先進部が十分に下降しているときのみ行う。
②また、血管攣縮を避けるため、脱出した臍帯にはできる限り触れない。よって、むやみに臍帯還納を行うことは勧められない。
(4)分娩機関外で発症した臍帯脱出への対応について
①臍帯脱出等の緊急事態が予想される妊産婦から連絡があった場合、骨盤高位や胸膝位の体位保持、移動手段など来院までの対処方法を具体的に指示する。
②また、来院時の場所や受付方法を分かりやすく伝える。
(5)移動可能な経腟超音波断層法装置の使用について
胎児先進部が一度固定されたとしても、妊産婦の移動などにより胎児先進部の位置が変わることがあるため、できるだけ妊産婦の移動を少なくし、移動可能な経腟超音波断層法装置が設置してある環境であれば、使用することが望まれる。」
常位胎盤早期剥離については,次の提言がなされています.
「(1)常位胎盤早期剥離の危険因子の管理
①常位胎盤早期剥離の危険因子(妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離の既往、切迫早産、外傷、喫煙など)に該当する妊産婦に対しては、より注意を促すような保健指導および慎重な管理を行う。
②一方、危険因子に該当しない妊産婦についても、常位胎盤早期剥離を発症することがあることを認識する。
(2)常位胎盤早期剥離と切迫早産との鑑別診断
①切迫早産様の症状と異常胎児心拍数パターンを認めたときは常位胎盤早期剥離を疑い、「産婦人科診療ガイドライン-産科編2011」に沿って、経腹超音波断層法、凝固系の血液検査、分娩監視装置による胎児心拍モニタリングを含めた鑑別診断を行う。
②早産期において子宮収縮抑制薬を使用中に常位胎盤早期剥離を発症した事例があったことから、切迫早産についてはこの点を踏まえ慎重に診断・治療、および妊産婦に対する服薬指導を行う。
(3)常位胎盤早期剥離の総合的診断
①常位胎盤早期剥離は、腹痛やお腹の張りおよび性器出血など代表的な症状だけでなく、胎動減少・消失、腰痛など代表的でない症状がみられることを念頭におき診断する。
②妊産婦の訴えを丁寧に聴取し、臨床症状や超音波断層法所見、また分娩監視装置による胎児心拍数モニタリングなどから総合的に診断する。
(4)常位胎盤早期剥離診断後の対応
①常位胎盤早期剥離が診断された場合は、DICなど母体の管理および早産など児の管理の面から、急速遂娩の方法、小児科医の応援要請、母体・新生児搬送の必要性などを判断し、できるだけ早く児を娩出する。
②脳性麻痺発症の原因究明等のためにも、常位胎盤早期剥離などの異常分娩やそれらが疑われるときは、胎盤病理組織学検査を実施することが望まれる。また、その際には詳細かつ正確な病理結果が得られるよう、血腫の付着部位等の具体的な臨床所見や状況などの情報を病理医に提供することが望まれる。」
子宮収縮薬の使用については,,次の提言がなされています.
「(1)子宮収縮薬の使用について
①適応・条件・禁忌を十分に検討し、文書により説明と同意を得た上で使用する。緊急時など口頭で同意を得た場合はその旨を診療録に記録する。
②子宮収縮薬の使用を開始する前より、胎児の健常性(well-being)の評価を行う。
③子宮収縮薬の使用および頸管熟化処置により、過強陣痛を起こすおそれがあるため、分娩誘発・促進中は適切に分娩監視装置を装着し、胎児の健常性(well-being)および陣痛の評価を常に行い、厳重な分娩監視のもと慎重に行う。異常胎児心拍数パターンが出現した場合は、子宮収縮薬の投与継続の可否について検討する。
④用法・用量を守り適正に使用する。
(2)複数の子宮収縮薬の使用について
オキシトシンまたはPGF2αを使用する場合は、PGE2最終投与時点から1時間以上経た後に使用すること、PGE2を使用する場合は、オキシトシンまたはPGF2α最終投与時点から1時間以上経た後に使用することとし、同時併用はしない。
(3)子宮収縮薬使用中のその他の分娩誘発・促進処置の実施について
①頸管熟化不良の場合は、頸管熟化処置後に分娩誘発・促進を行う。子宮収縮薬使用中に頸管熟化薬や吸湿性頸管拡張材を同時併用しない。
②メトロイリンテルと子宮収縮薬を併用する場合は、メトロイリンテル挿入時から1時間以上経過し、分娩監視装置による観察を行った後に子宮収縮薬を開始する。」
新生児蘇生については,次の提言がなされています.
「(1)バッグ・マスク等について
新生児仮死の90%は気道確保とバッグ・マスク換気で蘇生可能であることから、新生児蘇生については、気管挿管や薬物投与などの高度な技術を要する処置もあるが、まずバッグ・マスク換気と胸骨圧迫までは、すべての産科医療関係者がアルゴリズムに従って実施する。
(2)気管挿管について
①「アルゴリズムにおける出生後のチェックポイントで蘇生が必要と判断され、胎便の気管吸引が気道開通の一つの手段として有効と考えられる場合」、「数分間のバッグ・マスク換気が無効な場合」、「徐脈に対してアドレナリンを投与したいのに、静脈ラインがない場合」などの適応を正しく判断し、必要時に気管挿管を行う。
②気管挿管直後に、正しく挿管されているかを必ず確認する。児を移動させた場合など、移動による抜管も起こり得ることから、移動後にも挿管の状態(固定や胸郭の上がり、酸素化の値など)を再確認する。その後も適宜、気管挿管の効果や呼吸の状態を評価する。
③適切な挿管が困難と判断した場合、または挿管による効果がみられない場合は、無理に再挿管せず、バッグ・マスクに切り替える。
(3)アドレナリン投与について
①適切な換気や胸骨圧迫(30秒の人工呼吸・30秒の胸骨圧迫と人工呼吸)を続けても心拍数が60拍/分未満である場合に、アドレナリン投与を行う。
②投与経路にあわせ、正しい投与方法(希釈・用量)で投与する。
静脈内投与(末梢静脈または臍静脈)
ボスミン®を生食で10倍に希釈し0.1 ~ 0.3mL / kg(アドレナリン0.01 ~ 0.03mg/kgに相当)
気管内投与(高用量投与、投与後は吸収のために速やかに人工呼吸を開始)
ボスミン®を生食で10倍に希釈し0.5 ~1mL / kg(アドレナリン0.05 ~ 0.1mg/kgに相当)
(4)新生児蘇生における児の評価について
新生児蘇生にあたっては随時、児の状態を適正に評価し、改善がみられない場合は他の原因検索を行う。臍帯動脈血液ガス分析値を測定することにより、その後の新生児蘇生の効果を経時的に評価する。
(5)新生児蘇生法の継続的な学習について
新生児蘇生法講習会の受講後も、緊急時にいつでも実践できるように、知識の習得およびシミュレーションなどによる手技の確認等、継続的な学習や訓練を行う。」
分娩中の胎児心拍数聴取については,次の提言がなされています.
「(1)間欠的胎児心拍数聴取にあたっては、以下のことに留意する。
①一定時間(20分以上)の分娩監視装置の装着により正常心拍数パターンであることを確認した場合は、分
娩第Ⅰ期は次の連続的モニタリングまで(6時間以内)は、15~90分ごとに間欠的胎児心拍数聴取を行う。
ただし、分娩第Ⅰ期を通じて連続的モニタリングを行ってもよい。
②助産所において分娩監視装置を設置していないなどの状況では、分娩第Ⅰ期には15分ごと、分娩第Ⅱ期
には5分ごとに胎児心拍数を聴取する。
③間欠的胎児心拍数聴取の聴取時間は、分娩第Ⅰ期および第Ⅱ期のいずれも、子宮収縮直後に少なくとも60秒間は測定し、子宮収縮による胎児心拍数の変動について評価する。
(2)一定時間(20分以上)分娩監視装置を装着する状況は、以下のとおりである。
間欠的胎児心拍数聴取で一過性徐脈、頻脈を認めたとき(A)
破水時(B)
羊水混濁あるいは血性羊水を認めたとき(B)
分娩が急速に進行したり、排尿・排便後など、胎児の位置の変化が予想される場合(間欠的胎児心拍数聴取でもよい)(C)
「産婦人科診療ガイドライン-産科編2011」をもとに作成
注)推奨レベルは、「産婦人科診療ガイドライン」のA;(実施すること等が)強く勧められる、B;(実施すること等が)勧められる、C;(実施すること等が)考慮される(考慮の対象となるが、必ずしも実施が勧められているわけではない)である。」
具体的な実例に基づくだけあって,説得力があります.
谷直樹
ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
↓

にほんブログ村