弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

鹿児島地裁平成25年6月18日判決,鹿大病院に説明義務違反の大動脈人工血管置換手術の責任を認める(報道)

KYT鹿児島読売テレビ「鹿大に3800万円余りの支払いを命令」(2013年6月18日)は,次のとおり報じました.

「鹿児島大学病院で川畑佳久さん(当時73)が大動脈瘤の手術を受けたあと、体が麻痺し寝たきりになったなどとして、家族が約7300万円の損害賠償を求めていた裁判で、鹿児島地裁は手術の方法に過失が認められるとして、大学側に3800万円あまりの支払いを命じた。裁判の主な争点は手術の必要性があったか。また手術の方法に過失があったかどうか。18日の判決で鹿児島地裁は、手術の必要性については「医師の裁量にゆだねられる」とした。一方で、手術の方法については「事前に患者から同意を得ておらず、不適切で許されない」と大学側の過失を認定。「途中で手術を断念すれば麻痺が発生しなかった可能性が高い」として、手術と麻痺の因果関係を認め、大学側に3800万円あまりの支払いを命じた。原告で川畑さんの長男の智義さんは「父が手術が終わって寝たきりになったあと、なぜこうなったのかということを非常に知りたがっていた。良い判決をいただいたということを伝えたい」と話した。これに対し、大学側は「判決文を詳細に検討して今後の対応について協議する」とコメントしている。」

毎日新聞「医療過誤損賠訴訟:鹿大病院に3800万円支払い命じる 医師の過失認定−−鹿児島地裁」(2013年6月19日)は,次のとおり報じました.

「鹿児島大学病院(鹿児島市)で必要のない手術を受け、下半身まひを負ったとして、鹿児島市の男性が大学側に総額約9700万円の損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁(久保田浩史裁判長)は18日、病院側に対し計約3800万円を遺族側に支払うよう命じた。

 裁判では、2006年5月、当時71歳の男性が同病院で受けた大動脈瘤(りゅう)の手術を巡り、大動脈を人工血管に置き換える手術法が事前に説明を受けたものと異なると主張。男性は術後、麻酔の影響で下半身不随となり、09年5月に脳梗塞(こうそく)で亡くなった。

 判決は「男性の同意を確認することなく、人工血管置換術を行った点に医師の裁量を越えた過失がある」と認定した。【土田暁彦】」


時事通信「鹿児島大に3800万円賠償命令=患者半身まひ、医師の過失認定-鹿児島地裁」(2013年6月18日)は,次のとおり報じました.

「鹿児島大病院(鹿児島市)で2006年、胸部大動脈瘤(りゅう)の人工血管置換手術を受けた男性=当時(71)=が半身まひとなり、その後死亡したのは、事前説明と異なる「プルスルー法」で手術をしたのが原因として、遺族が同病院に約7300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、鹿児島地裁であった。
 久保田浩史裁判長は「まひの危険性が高い手術を、患者への事前説明がない上に同意を得ずに行ったのは、医師の裁量の範囲を超え、不適切であって許されない」として、医師の過失と男性のまひの因果関係を認め、同病院に約3830万円の支払いを命じた。死亡との因果関係は認めなかった。」


プルスルー法の説明と同意がなく,実施し,対麻痺となった事案で,説明義務違反と対麻痺との因果関係を認めた判決です.適切な判決です.
詳しくは,代理人として本件を担当した小林洋二先生のブログを参照してください.

【追記】

KYT鹿児島読売テレビ「鹿大医療過誤訴訟 大学側が控訴断念」(2013年7月2日)は,次のとおり報じました.
「鹿児島大学病院の手術ミスで体が麻痺状態になったとして、手術を受けた男性(提訴後死亡)の遺族が損害賠償を求めた裁判で大学側は2日、控訴しないことを決めた。
病院側の過失を認め、3800万円余りの支払いを命じた先月18日の鹿児島地裁判決が確定する。
この裁判は2008年6月、鹿児島市の男性(当時73)が鹿大病院で大動脈りゅうの手術を受けた後、胸から下が麻痺した状態になったなどとして、遺族が大学側に損害賠償を求めていたもの。
控訴しないことを決めた大学側は「判決を重く受け止め、インフォームドコンセントの在り方についてしっかりとした見直しを行い、安全に配慮した医療に取り組んでいく。」とコメント。
男性の遺族は「判決をきちんと受け止めていただいた。今後同じような不幸な結果にならないようにしてほしい。」と話している。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-06-20 02:21 | 医療事故・医療裁判