弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書

ノバルティスファーマ(スイス本社)は、バルサルタンの5つの医師主導臨床研究にノバルティスファーマの社員の関与があった可能性につき調査するため、2013 年 4 月 22 日、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所/伊藤見富法律事務所(外国法共同事業事務所)に調査を委託いたしました.その結果、2013 年 7 月 29 日、「バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書」が公表されました.

バルサルタンの5つの医師主導臨床研究は、次のとおりです.
 東京慈恵会医科大学による「JIKEI Heart Study」 (“JHS”)
 千葉大学による「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」(“VART”)
 京都府立医科大学による「KYOTO Heart Study」(“KHS”)
 滋賀医科大学による「Shiga Micro Albuminuria Reduction Trial」(“SMART”)
 名古屋大学による「NAGOYA Heart Study」(“NHS”)

調査は、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所/伊藤見富法律事務所(外国法共同事業事務所)の17 名の弁護士と法務専門家から構成されるチームにより実施された、とのことです.
しかし、調査には限界がありました.
重要な社員の多くが退社し聴き取り調査に応じなかったうえ、関連文書もある時期のものは入手することができず、5つの医師主導臨床研究に大幅に関与していた元社員に対しては、辞職前の2回計約 4 時間半の聴き取りを行ったのみで、辞職後は聴取できず、個人所有のコンピュータに保存されている業務活動の記録を調査することを拒まれた、とのことです.
また、ノバルティスファーマは研究データや被験者のカルテを入手する立場にないため、研究論文で導かれている結論の整合性を確認するための独立した分析は行われなかった、とのことです.

そのようなものとして、「バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書」を読むべきでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2013-08-01 23:09 | 医療