弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

箕面市立病院,空気塞栓症による71歳男性死亡事案で,3600万円示談(報道)

読売新聞「肺がん手術中に針貫通、死亡…遺族と病院和解」(2013年8月28日)は,次のとおり報じました.

「大阪府箕面市の同市立病院で昨年6月、肺がん手術中に男性患者(当時71歳)が死亡する医療事故があり、同病院は27日、遺族側に約3600万円の示談金を支払うことで和解が成立した、と発表した。

 9月4日開会の市議会に示談金支払いに関する議案を提出する。

 発表によると、昨年6月26日、男性の左肺の一部を切除する手術で、担当医が肺に空気を送るために気管支に針を刺した際、誤って針が気管支を貫通し、肺静脈に刺さった。しかし、ミスに気付かず、そのまま肺静脈に空気を送り、数秒後、男性は全身の血管内に空気が入り血流が止まる「空気塞栓症」を発症。救命処置を行ったが、約2時間後に死亡したという。

 記者会見した重松剛・市病院事業管理者は「亡くなった患者や遺族に対し、心から申し訳なく思っている。再発防止に努めていきたい」と陳謝した。」


約20ミリリットル以上の空気が入ると空気塞栓症を起こし,血液の流れがとまります.
肺静脈に空気を送ってしまったことが肺塞栓症の原因ですから,因果関係と注意義務違反が認められますので,病院側の責任は明らかです.

なお,逸失利益の算定は,事故がなければその患者がどれくらい生きることができたかによって異なります。そこで,その患者の余命が問題になることがあります.他方,死亡慰謝料については,余命の長短は死亡慰謝料の算定に影響しないという考え方(この考え方のほうが正しいと思います)と,多少算定に影響があるという考え方があります.


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-29 06:05 | 医療事故・医療裁判