総務省,医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>,事故の再発防止について
91医療機関のうち5機関(全て病院)では,形式的に事故件数等を報告しても意味がないなどとして,医療安全管理委員会への医療事故の報告を一部のものに限定していたとのことです.
しかも,そのうち2機関では,再発防止策の周知や情報共有が医療安全管理部門と事故が発生した部署でしか行われておらず,病院全体での再発防止策の把握や情報共有が行われていなかったとのことです.
また,10医療機関では,策定された再発防止策が遵守されていなかった,と報告されています.
行政が再発防止作の遵守について点検確認していない現状も明らかになりました.
医療事故の再発防止についての調査結果と所見は,次のとおりです.
「【調査結果】
今回、医療安全管理体制の確保に係る措置の実施状況について、19都道府県、都道府県が設置する21保健所、市又は特別区が設置する19保健所及び143医療機関(病院69機関、有床診療所56機関、無床診療所18機関)を調査した結果、次のような状況がみられた。
ア 医療安全管理体制の確保の現状
(ア) 医療安全管理指針の整備状況(平成24年11月末現在) 医療安全管理指針については、143医療機関のうち、131機関が整備している。
(イ) 医療安全管理委員会の開催状況等(平成23年度) 医療安全管理委員会については、設置義務のない無床診療所18機関を除く125医療機関のうち、121機関が設置・開催している。
(ウ) 医療安全管理研修の実施状況(平成23年度) 医療安全管理研修については、実施状況が不明である12機関を除く131医療機関のうち、111機関が実施している。
(エ) 医療安全の確保を目的とした改善方策(平成23年度平成23年度には、143医療機関のうち、91機関(病院66機関、有床診療所23機関、無床診療所2機関)で医療事故が発生し、発生件数は1万75件(病院9,671件、有床診療所399件、無床診療所5件)となっている。 当該91機関のうち、86機関は医療事故全件を医療安全管理委員会に報告している。しかし、その他の5機関(全て病院)では、形式的に事故件数等を報告しても意味がないなどとして、医療安全管理委員会への医療事故の報告を一部のものに限定しており、そのうち2機関では、再発防止策の周知や情報共有が医療安全管理部門と事故が発生した部署でしか行われておらず、病院全体での再発防止策の把握や情報共有が行われていない。
イ 従業者による再発防止策の遵守の徹底 医療事故が発生した医療機関における再発防止策の遵守状況等をみると、143医療機関のうち10機関(病院7機関、有床診療所2機関、無床診療所1機関)で、医療事故が発生したことにより策定した再発防止策が遵守されていないものが10事例あった。
再発防止策が遵守されていない理由として、当該10機関からは、
ⅰ)再発防止策は策定していたが、その周知が従業者一人一人まで行き届いていたとは言えなかった(1機関)、
ⅱ)再発防止策を策定し、各部署で実施していたが、その効果を把握していなかった(1機関)、
ⅲ) ) 再発防止策を従業者に周知するのみであり、当該事故に基づく研修を実施していなかった(1機関)
など、医療機関における再発防止策の周知や実施状況の把握・確認等が不十分であったことが挙げられている。
また、当該10機関に対する都道府県等による立入検査の実施状況についてみると、医療事故が発生した後の立入検査において、いずれも院内での再発防止策の周知状況や遵守状況についての指摘は行われていない。
医療事故の発生した医療機関に対する都道府県等の立入検査において、院内の再発防止策の周知状況や遵守状況についての指摘等が行われていない原因の1つとして19年3月通知において、医療安全管理委員会で策定された改善策の実施状況については、同委員会が必要に応じて調査し、見直しを行うこととされていることもあると考えられる。
実際、調査した59機関(19都道府県、都道府県が設置する21保健所、市又は特別区が設置する19保健所)のうち8機関(2都道府県、都道府県が設置する3保健所、市又は特別区が設置する3保健所)においては、立入検査時に使用する検査表等において、医療安全管理委員会で策定された改善策の実施状況を必須の検査事項としていなかった。
さらに、厚生労働省は、医療機関における再発防止策の周知及び遵守状況に係る都道府県等の立入検査の実施結果について、都道府県等からの報告を特段要請していない。
【所見】
したがって、厚生労働省は、医療機関における医療事故の再発防止を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
① 医療安全管理委員会には、当該医療機関で発生した医療事故の全てが報告され、策定された再発防止策が当該医療機関全体で情報共有されるよう必要な措置を講ずること。
② 都道府県等を通じ、医療機関に対して、発生した医療事故に係る研修の実施や再発防止策の効果の把握などにより、医療機関の従業者による再発防止策の遵守が徹底されるよう要請すること。
③ 都道府県等に対して、医療事故が発生した医療機関に立入検査を実施する際には、再発防止策の策定状況の検査だけではなく、再発防止策の周知及び遵守状況まで確実に検査するよう要請すること。 また、都道府県等に対して、立入検査の実施結果について報告を要請すること。」
谷直樹
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