受精卵診断の実態,厚労省研究班が報告
「受精卵診断
体外受精させた受精卵が4~8個の細胞に分裂した段階で、1、2個の細胞を取り出して染色体や遺伝子の異常を調べ、異常がない受精卵を子宮に戻して妊娠、出産につなげる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど一部の重い遺伝病や、繰り返し起こる習慣流産が診断の対象。妊娠後の出生前診断と違い中絶手術を避けられるとの指摘がある一方、命の選別の側面がより強いとの批判がある。日本産科婦人科学会が審査し、これまでに11施設の実施を承認した。このほか、学会の承認なしに、諏訪マタニティークリニック(長野)や大谷レディスクリニック(兵庫)が実施を公表している。
受精卵診断 遺伝情報の管理ずさん 閲覧制限なし、カルテ記載
遺伝子や染色体の異常を調べる受精卵診断(着床前診断)をしている医療機関で3施設が患者の遺伝情報の閲覧を制限していないなど、多くの機関で管理体制が不十分であることが、厚生労働省研究班(主任研究者・吉村泰典慶応大教授)による調査で2日までに分かった。
受精卵診断は、重い病気の原因となる遺伝子変異や、流産を繰り返す染色体の変化が子どもに伝わるかどうかを判定するため、体外受精で作った受精卵の一部を取り出して検査する。日本産科婦人科学会は「遺伝情報は最も重大な個人情報である」として厳重な管理を求めている。
国内で受精卵診断を実施している医療機関の大半とみられる12施設を調査した結果、3施設では患者の遺伝情報を閲覧できる担当者を決めていなかった。7施設では専門医以外も見る通常の産婦人科のカルテに遺伝情報を記載していた。
患者には専門的な遺伝カウンセリングが必要だが、検査の前後に行っているのは3施設で、9施設は検査前だけだった。専用のカウンセリング室を使わず、外来の診察室で行う施設もあった。研究班は「遺伝情報の取り扱いと管理は不十分な体制の施設がほとんどだった」と指摘した。
受精卵診断は2006年から12年10月までに、12施設で211組の夫婦が受診し、70人が生まれた。吉村教授は、受精卵診断は障害者への差別につながりかねないとの懸念が出されているとした上で、「体制をきちんと整えて実施しなければいけない。どのぐらいの割合で子どもが病気になり、どのように育つかなどを含めた専門家のカウンセリングも重要だ」と話している。
● 事前審査も不十分
▼生命倫理が専門の〓(〓はきへんに勝)島次郎・東京財団研究員の話 厳格な情報管理は、受精卵診断だけでなく遺伝子検査全般で必要だ。カウンセリングもいつでも受けられる体制にすべきだ。今回現場の一部で見つかった不備は日本産科婦人科学会の指針(会告)と事前審査が不十分だったという面もある。結果を踏まえ、指針を見直し改定すべきだ。受精卵診断技術の安全性を検証するため、生まれた子の健康状態を追跡することも不可欠で、その体制になっているかも調べなければいけない。 」
懸念されていた事態です.
谷直樹
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